「かしこい省エネは、まちの電器屋さんに聞け!」バックナンバー
ヤナギサワ電機は今年で創業60周年。地域に根ざして暮らしや住まいのお困りごとに答えてくれる「まちの電器屋さん」だ。
お店がある三輪地区は、1丁目から10丁目まである広い地域。地域の中には保育園、小中学校、高校、短大、大学と、さまざまな教育機関がある。柳沢さん曰く「市営住宅があり、子育て世代の世帯も多いのですが、反面、高齢者世帯や、子どもの家に引っ越しして空き家になった家も多く点在しています。いわばあらゆる年齢層が生活している地域」だそう。
そこで、店ではどの世代にとっても直感的に伝わるような言葉や展示内容を心がけている。「専門的な内容を、可能な限り一般的な表現でお伝えしたいと思っています。地域密着が当店のスタイルなので、地域の出来事や関心事を織り交ぜた提案方法を心がけています」と話す。
長野県は中山間地が多いということもあり、車の使用、冬の暖房にかかるCO2排出量が多い。2015年のデータによると、県の温室効果ガス総排出量のうち、家庭からの排出量は約400万トン。県で定めるエネルギー戦略では、2020年度の目標までにあと25%の削減が必要だ。
長野県は、県の認定を受けた「家庭の省エネサポート事業者」にアドバイザーになってもらい、一般の顧客を相手にした仕事のなかで省エネアドバイスや省エネ診断を行う「家庭の省エネサポート制度」を実施している。昨年、平成30年度からは、柳沢さんなど「まちの電器屋さん」と協力して、家庭の省エネを推進している。県にとっても、実際に家庭のCO2排出量を減らす行動(=買い換え)に一番近いところにいる「まちの電器屋さん」との連携に期待するところは大きいだろう。
実際、“古い家電を使っている”という意識の薄い人たちに対して、地域密着型の「まちの電器屋さん」は、省エネを働きかけられる存在として、大きな可能性がある。
柳沢さんは冷蔵庫を例に挙げて「『5?6年使ったかな?』というお話を伺って、実際調べると10年を超えている場合がほとんどなんです。10年前の冷蔵庫では、今の省エネ型冷蔵庫と比べて2?3倍の電気代がかかっているんですが、そこに気付いていない。『まちの電器屋』として、『お会いする事で伝えられること』というのを大事にして、省エネ家電についての話をさせていただいています」と話す。電気代の節約などのメリットがあるが、買い換えの相談を受ける中で「それが環境にもやさしくなる」という話を必ずしている。
さらに「今、ハイグレード製品には必ず省エネが盛り込まれています。つまり『ハイグレード製品をお勧めする=省エネ製品をお勧めする』ということにもなるのです。この事は売り上げに対しても+αになっていると思います」。
ヤナギサワ電機は事業者として、県の「信州省エネパートナー」にも登録されている。これは、事務所や工場などで率先して節電をしたり、県民への普及啓発をしたりして、節電・省エネに取り組む事業者を県が登録し、連携・協働を進め、節電・省エネルギーの取り組みを広げていこうというもの。
柳沢さんは「省エネ家電をお勧めする時、家電店や家電メーカーの一方的な訴えかけだけでなく、自治体や他団体の後ろ盾があるという感じで、自信を持って『まちの電器屋』として省エネを語れます」と前向きにとらえている。
また、柳沢さんは「長野県版省エネワンツーアドバイス」のパンフレット改訂にも検討会委員の立場から意見を出している。「とにかく『長野県の家はさむい!!朝起きた時の寝室の温度は全国で最低の8.8℃』、というショッキングな内容が表紙になっています。お客様にお渡しして説明する際には、ここからヒートショックなどの話題につなげつつ、効率の良い暖房の必要性を話すという、とてもいい展開ができる内容です」と柳沢さん。行政が中心になって考えるのではなく、生活者に近いところにいるまちの電器屋さんが参加したからこそ、引き出されたフレーズだ。
県との連携を始めたことがきっかけとなり、新しい試みが始まった。この秋から冬にかけて長野県電機商業組合が行う「夢の電化まつり」で、県の「信州省エネ大作戦」関連イベントを実施することになったのだ。家庭で使用中の製造後10年以上経った冷蔵庫をチェックし応募すると、抽選でプレゼントがもらえる『家電の年式チェックキャンペーン』を行なっている。
現在、長野県電機商業組合長野支部の支部長もつとめる柳沢さん。「私たちのような地域密着型の『まちの電器屋』は、私たち自身もまちの一員であり、住民であるわけです。地域の方々により良い生活を送っていただきたいので、それぞれのお客様の生活様式にあった製品や、もちろん省エネについては、必ずお伝えすべき内容だと思っています。環境問題は地域の生活にも密接しているという事をもっとアピールしていきたいです」と熱く語る。
こうした取り組みが電商組合員を中心に広がっていき、全国で電気のプロであるまちの電器屋さんが、地球温暖化対策の分野でも大きな役割を担っていくためには何が必要なのだろうか?
「私たち電機商業組合ではスマートライフコンシェルジュという認定制度を設けて、勉強の機会が与えられています。省エネの知識を地域の皆さんに伝えていくという役割があるので、それを自覚して、省エネ家電への買い換え促進を図っていけたらと思います。全国の組合員が目的を共有する事でさらに環境対策を推し進め、それぞれの場所で『地域愛』を出していけたらいいし、組合としてそういった活動に取り組みたいですね」と話す。
昨年県が行った「省エネを普及させるための検討会」でも、信頼できる人からアドバイスを受けた方が効果があるという意見が出ている。ヤナギサワ電機のように地域の信頼を得ているまちの電器屋さんが、省エネ家電への買い換え、ひいては地球温暖化防止に大きな役割を担っていくことを期待したい。
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