「自然保護の現場から ~アメリカ国立公園滞在記~」バックナンバー
南極を担当する部署(通称、南極係)は、自然環境局自然環境計画課にあり、勤務地は霞が関の環境本省になります。入省6年目にして、私にとっては初めての本省勤務だったので、激務におびえつつ、勤務を開始しました。自然環境局は、日比谷公園に面した合同庁舎五号館の26階にあり、オフィスの場所も、自分の仕事の内容も、地に足がついていないという印象でした。本省の仕事のお作法に慣れるまでは緊張しましたが、これまでの地方勤務の際に一緒に働いたことがあるレンジャーも多く、働くうちにアットホームな環境だと感じられるようになりました。
ここで簡単に、環境省と南極の関わりについて触れたいと思います。南極条約は、南極地域(南緯60度以南の地域)を平和的に利用すること、領土権主張を凍結すること、科学的調査の自由と国際協力を促進することなどを主な内容として、1961年に発効しました。その後、南極の環境と生態系を包括的に保護することを目的とした「環境保護に関する南極条約議定書」が1991年に採択、1998年に発効しました。議定書では、動物や植物の保護、廃棄物の処理や管理方法などが決められています。
ちなみに、日本の南極観測事業に関する有名な話として、第1次南極観測隊が犬ぞり用の犬として持ち込み、その後南極に取り残されたものの奇跡的に生き延びたタロとジロの話があります。日本の観測隊に限らず、南極探検において、犬は移動手段として長年使われてきた歴史があります。ただし現在では、犬は「外来種」であるため、議定書の規定により南極には持ち込めないことになっています。
日本では、1997年にこの議定書を国内で担保するため「南極地域の環境保全に関する法律」が制定されました。環境省はこの法律の所管省庁として、法の運用を行っています。また、この法の施行前後から、南極の環境が維持されているかどうかを確認するため、数年に1回の頻度で南極観測隊に環境省職員を派遣するようになりました。
南極係の仕事は、南極条約といった国際会議への対応や、法律に基づく許認可業務、南極観測隊関係の会議など、霞ヶ関にいる間は99%くらいデスクワークといっても過言ではありません。が、南極係の業務の目玉は、やはり、南極行きです。私は2016年11月に日本を出発する第58次南極地域観測隊の夏隊同行者として、南極に行くことになりました。
出発に向けた準備は、出発の約一年前から本格化します。2016年3月には、冬訓練があり、ここで観測隊候補者が初めて顔合わせします。冬訓練は、地図とコンパスで進む方向を割り出すルート工作や、雪上で一晩を越すビバーク訓練、クレバスに落ちたことを想定した登り返しの訓練など、アウトドア技術の習得をメインとした訓練で、アウトドア好きの私としては楽しい内容でした。続いて、6月には、夏訓練があり、観測隊の歴史や隊の計画などを学びます。その後、秋にかけ、調査物資や生活用品の詰め込みなど準備作業の佳境を迎えます。
出発までの準備は、当然ながら霞が関でのデスクワークとはまったくの別世界。観測事業全体の流れがイメージしきれなかったので、実際に南極に行ってついていけるのだろうかと不安がよぎることもありました。
南極までは、オーストラリアから南極観測船「しらせ」に乗って、片道1か月ほどかかり、往復で4ヶ月という長旅になります。4ヶ月の間はふらっと買い出しにも行けないので、あらかじめお菓子やお酒などの嗜好品、薬やシャンプーなどの必需品をたくさん詰め込んで出発です。
(次回に続く)
海外に行った時は、スーパーや市場に寄り、そこで売られている野菜や果物、肉や魚など食品を見るのは楽しいものです。
アメリカのスーパーでは、チェーン店のスーパーにも「オーガニック」コーナーが設けられており、有機の農産物が日本より手にしやすい環境にあると感じます。The World of Organic Agriculture Statistics and Emerging Trends 2023(FiBl and IFOAM)の統計では、アメリカでの一人あたりの年間有機食品消費額は146ユーロ(2021年)で世界9位となっています(同統計では、日本11ユーロ(2017年))。
さらには、サステナブルな商品を多く扱うお店では、量り売り(バルク)のコーナーもあります。香辛料、茶葉、コーヒー、小麦粉、パスタ、お菓子など、いろんな商品が量り売りされていて、なかには、わかめや昆布もあり驚きました。
また、アジア食品店のような専門店でなくても、スーパーの品ぞろえは国際的で、お米(カリフォルニア米)、味噌、豆腐、米酢、そば、わさび、キムチ、海苔、餃子、ラーメンなどおなじみの食材も売られており、食に困ることはあまりありません。
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