九州のほぼ中央部、奧豊後と呼ばれる大分県西部の竹田市に長湯温泉があります。現在の竹田市は、旧岡藩の城下町として知られる旧竹田市と直入郡の荻町・久住町・直入町の1市3町が2005(平成17)年に合併して新しい市として形成されました。西部は熊本県、南部は宮崎県と接する広大な市域には「阿蘇くじゅう国立公園」や「祖母傾国定公園」の指定地域があり、豊かな自然環境の中に山岳や高原そして温泉が各地に点在しています。その中で最も規模が大きく、奧豊後地方を代表する温泉地が直入エリアにある長湯温泉です。
長湯温泉は標高450メートルの山間にあり、芹川沿いに旅館・公衆浴場・商店が建ち並び温泉街が展開しています。古くは湯原温泉と呼ばれ、藩政時代には岡藩主の中川氏によって湯小屋や茶屋などが設置され、藩主のみならず藩士の湯治を認めていたと伝えられています。川底や川原から温泉が湧出しているため、洪水や土砂崩れ等にしばしば見舞われ源泉が埋もれる災害がありました。1781(安永10)年に新しい藩主専用の湯屋が建てられ「御前湯」と呼ばれるようになり、現在の温泉療養文化館に引き継がれています。
長湯温泉の最も大きな特徴は温泉そのものにあります。主な泉質は二酸化炭素泉と炭酸水素塩泉で、炭酸含有量が多く日本屈指の炭酸泉として知られ、高温の温泉における炭酸含有量の多さは特筆されるものです。1933(昭和8)年には九州大学の別府温泉治療学研究所に籍を置きドイツで温泉治療学を学んだ松尾武幸博士が、長湯温泉の医学的効果の研究に着手。『飲んで効き 長湯して利く 長湯のお湯は 心臓胃腸に血の薬』と言う歌を残しています。ヨーロッパ諸国の温泉地で行われている「飲泉」が、長湯温泉では昭和初期に松尾博士の指導により実施されていたことが窺えます。また、炭酸ガスが発生する入浴剤の開発にあたって長湯温泉が研究対象となったということです。
長湯温泉には多くの源泉がありますが、比較的泉温の低い炭酸含有量の高い源泉の温泉に入浴すると、身体が細かい泡に包まれます。この泡が炭酸で、長く入浴していると低温ながらよく温まります。毛細血管が拡張して血液の循環が良くなることから、様々な効果が期待できると言われています。
現在、長湯温泉には十数軒の宿と数軒の入浴施設があります。芹川の河川敷には江戸時代の古図にも描かれている名物の「ガニ湯」があり、無料で開放感ある温泉を楽しむことができますが、囲いがないので入浴するには少し勇気が必要です。
1978(昭和53)年に国民保養温泉地の指定を受け、保養型の温泉地として直入町の時代から行政が整備を進めてきました。ドイツとの交流を推進し、炭酸泉で有名な温泉地のバート・クロッチンゲンとの友好親善を結んでいます。人的交流だけでなく、ドイツで長湯ブランドのワイン製造など経済的交流も進めています。
欧風飲泉所の設置をはじめ、温泉地内に複数の飲泉所が設置されています。また、共同浴場や既存の温泉浴場に加え温泉療養文化館の「御前湯」が設置されて、温泉を保養・療養に利用できる環境が整っています。さらに、民間では炭酸含有量の高い源泉を利用した入浴施設「ラムネ温泉館」や滞在型コテージ等が設置され、保養型の温泉地として一段と充実してきました。
竹田市では、1回あたり2泊?3泊して「歩いて、温泉浴して、食べて、笑う」という“竹田式湯治”を提唱。これを体験するために「竹田市温泉療養保健制度」の実証実験を実施しています。このシステムは「温泉療養保健パスポート」の発行を受けて4ヵ月以内に竹田市内にのべ3泊以上宿泊すると保健給付(宿泊1泊500円、立寄湯1回200円)が受けられるという国内初の試みです。さらに竹田市内の飲食店や体験イベント等で種々の特典があります。長湯温泉はもちろん、竹田・久住・萩の各エリアの温泉旅館や日帰り温泉施設の利用が保健給付の対象となっています。奧豊後の温泉を巡り豊かな自然と文化を体感しながら、心を癒して健康増進を図れることでしょう。
パスポートの発行場所は竹田市観光ツーリズム協会、久住高原観光案内所、長湯温泉観光案内所です。詳細に関してはホームページを参照して下さい。
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