九州西部の長崎県雲仙市に雲仙温泉と小浜温泉があります。雲仙市は2005年に島原半島北西部の7町が合併して誕生しました。北側が有明海に西側が橘湾に面して東側は雲仙山系の急峻な山岳地帯で、起伏に富んだ地勢となっています。
小浜温泉は橘湾沿いにある海辺の温泉地で、雲仙温泉は高原の温泉地です。立地環境は大きく異なりますが、どちらの温泉地も旧小浜町の所属で永い歴史があり、「雲仙・小浜」として環境省から国民保養温泉地の指定を受けています。
島原半島は日本で最初の「世界ジオパーク」に認定されています。地球科学的に貴重な遺産を保護しつつ、それらを地域の教育や科学振興および観光事業に活用し、持続可能な方法で地域を活性化させること等が要求される自然公園です。島原半島の変化に富む景観や温泉は火山活動が及ぼした恩恵でもあり、小浜温泉や雲仙温泉の温泉の成因などに関する解説版が設置されています。
また、雲仙は1934(昭和9)年に日本で初めて指定された国立公園です。その後熊本県の天草諸島が追加され「雲仙天草国立公園」として現在に至っています。そもそも「雲仙」という山はなく、普賢岳をはじめとする「三峰雲仙五岳」と言われる8つの山々を総称して「雲仙岳」と呼ばれているそうです。
橘湾に沿って小浜の温泉街が展開しています。100℃前後という非常に高い泉温が特徴で豊富な湧出量を誇り、泉質は塩化物泉です。古くから温泉が自然湧出しており、明治の半ば頃までは波打ち際に宿が建てられていました。その後埋め立てや国道が造られて現在の形となりました。小浜町歴史資料館には、小浜温泉の歴史や古い写真をはじめ、貴重な資料が展示されています。
海に沈む夕日が美しい温泉地で、歌人の斎藤茂吉がこの景観を絶賛して歌を残しています。温泉街には外湯が4施設点在しています。また、多くの旅館も立ち寄り入浴を受け入れています。お薦めは、海上露天風呂波の湯「茜」。満潮時には浴槽と海面とが20cm程になるそうで、迫力があり海と一体化した気分が味わえます。
小浜温泉の人気スポットは「ほっとふっと105」。小浜の最高泉温が105℃であることから名付けられた足湯で、それにちなんで長さを105mとして「日本一の足湯」と謳っています。傍には湯煙をあげる源泉があり、高温の温泉が棚田状に流れ落ちてくる様子を見ることができます。さらに無料で利用できる「蒸し釜」が設置されています。ベンチとテーブルが整備されているので、温泉の蒸気で蒸した卵や野菜や海産物などをその場で食べることができます。食材は売店で調達できますし、持ち込みも可能です。
雲仙岳中腹、標高700mの高原に雲仙の温泉街が展開しています。「地獄」と呼ばれる噴気と火山ガスに含まれる硫化水素臭が漂うことが大きな特徴で、泉質は酸性硫黄泉です。開湯は701(大宝1)年に僧行基が
雲仙温泉の人気スポットは、古湯地区と新湯地区の間にある「雲仙地獄」巡りです。いたる所から水蒸気と火山ガスが噴出して湯煙を上げている噴気地帯には遊歩道が整備され、「清七地獄」「お糸地獄」「阿鼻叫喚地獄」など大小あわせて30ヵ所ほどの地獄を巡ることができます。また、温泉街の西端には沼野植物群として国の天然記念物に指定された「原生沼」があり、ミズゴケやスギゴケなどを見ることができます。
標高1,000mを超える仁田峠付近は見晴らしが良く、展望台やロープウェーが架けられています。雲仙の温泉街から仁田峠に至る付近一帯は、春はミヤマキリシマ・ツツジ、初夏の新緑、秋は紅葉、そして冬は霧氷など、四季を通じて美しい自然景観を楽しむことができます。
雲仙普賢岳の噴火活動が1990(平成2)年にはじまり、翌年には大火砕流が発生して大きな自然災害がありました。その後も火山活動は続いて溶岩ドームが次々と出現し、標高1,483mの「平成新山」が形成されました。鎮静化まで6年余りの歳月を要しましたが、その後も立入が禁止された地域が設定されてきました。
今年5月9日に普賢岳の安全が確認された部分で「雲仙岳警戒区域」の一部が解除されて新たな登山道が開通しました。平成新山を間近に望む「普賢岳登山道」は、生きている地球を間近に体験できます。まさにジオパーク。雲仙の新しい魅力となることでしょう。
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