シーワ・オアシスの南西からリビア国境にかけて広がる砂漠は、グレートサンドシー(Great Sand Sea)と呼ばれています。連綿と続く砂丘が一番美しく見えるのは、広大な地平に太陽が沈む瞬間。その時をめざし、砂漠サファリには日没の3時間程前に出発します。
案内してくれたのは、砂漠運転歴30年のアブドラ・バギさん。実は地元の名士で、シーワ教育庁の責任者を務めています。昼間はスーツに身を固め、お偉方相手に仕事をするも、夕方には民族衣装を身にまとい砂漠に出かけるのが日課。シーワの自然を愛してやまない誇り高きベルベル人です。
「俺の頭にはGPSが埋まっているのさ」
一見、どれもよく似た形に見える砂丘は、ひとつとして同じものはありません。アブドラさんは、日々少しずつ変化していく砂丘の稜線と、地面の状態をすべて記憶しています。間違って柔らかい砂地に入ってしまおうものなら、ベテラン運転手でもスタックする危険があるのです。わずかな地表の違いを見分け、大砂丘の海原を滑るようにランドクルーザーを走らせるハンドルさばきは職人技です。
砂漠サファリはなんといっても、風と砂がつくりだす造形と、刻一刻と変化する色彩を楽しむもの。その上、約4千万年前まで海の底(テチス海)【1】にあったシーワでは、たくさんの海洋生物の化石を見つけることができます。たった今、砂浜に打ちあげられたように見える貝殻も、実は大昔の命のかけら。古代の海が、現在の地中海の位置まで後退した後は、樹木に覆われていた時期もあったのでしょうか。珪化木【2】も残っています。
そして、過酷な環境に負けず、今もさまざまな生物が暮らしています。運がよければ「砂漠色」の毛並みが美しいフェネック【3】に出会うことができます。スカラベ(フンコロガシ)【4】は古代エジプト王国時代、「聖なる甲虫」として崇拝されていました。
2007年には、シーワ郊外の岩山で古代人の足跡が発見されたとして大騒ぎになりました。地層の年代からは2?3百万年前の猿人のものと推定され、科学者が分析中と報じられたものの、その後何も発表されていません。猿人の足跡ではなく、数万年前の古代人が、岩に絵を彫ったものだという説もあります。
古代人の親子が夕日でも眺めていたかのように、仲良く並ぶ大小の足跡。真相は解明されない方がよいのかもしれません。
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