猟期が終わると、自宅の業務用冷凍庫の中はイノシシ肉・シカ肉でいっぱいになります。これを次の猟期までにボチボチと食べていくわけです。獣肉の料理というと、イノシシ肉なら牡丹鍋、シカ肉なら鹿刺しやタタキが定番で、我が家も来客の際にはそれらを用意して振舞うことが多いです。でも、ふだんの食事で毎回牡丹鍋やタタキを食べるわけではありません。確かに美味しい食べ方だとは思いますが、毎回では当然飽きてしまいます。
私は自分が行う狩猟を「生活の一部」だと位置づけていますので、当然その獣肉もなるべく普段の食事に利用できるようにしていきたいと思っています。ただ、別に「肉は自分がとったものしか食べない!」とかたく誓ったりはしておらず、近所の定食屋で豚の生姜焼き定食も食べますし、自宅で親子丼を作って食べることもあります。
ちなみに、獣肉の料理法ではフランス料理など欧米の料理も有名ですが、それらも手の込んだものが多く、参考にできるところはありますが、なかなかふだんの食事にそのままは利用できません。
最近は、獣肉をもらったんだけどどうやって食べたらいいか、と聞かれることも増えてきましたので、今回はそれぞれの肉の特徴とおすすめの食べ方を紹介したいと思います。
良い時期に捕り、きっちりと処理したイノシシ肉であれば、どんな食べ方をしても臭みがなく美味しいものです。調理する際のイメージは「味が濃い豚肉」で問題ありません。イノシシの脂身は豚のものと比べると脂っこくなく、脂身の多い肉ほど良い肉とされます。ただ、生後半年で出荷される豚と違い、イノシシは個体の年齢によって肉の硬さが違いますので、なるべく薄く切るのがよいでしょう。個人的には塩コショウだけの焼肉が一番好きですが、すき焼きにしても野菜炒めに入れても、また、カレーやシチュー、ポトフも美味しくできます。
獣肉はかたまりで手に入る場合も多いと思います。その場合はまるごと蒸し豚(蒸し猪ですが)やチャーシューにして食べてみてもよいかと思います。
もし、ニオイが気になるお肉にあたってしまった場合は、何回かゆでこぼしてから醤油・味醂・酒・砂糖で炊いて時雨煮にしてしまえば、たいていの肉はおいしく食べられます。
ここ数年、激増しているシカ対策と称して、「シカ肉の有効利用を考えよう」というイベントや新聞記事などをしばしば目にするようになりました。シカ肉バーガーやコロッケなどの食べ方なども紹介されています。どんな食べ方をしても美味しいイノシシ肉と違い、シカ肉はちょっと工夫がいります。
シカ肉にはほとんど脂身がなく、高タンパク低カロリーの理想的な健康食材ですが、脂身の多い畜肉を食べ慣れた私たちには、逆にちょっと味気なく感じてしまいます。
ですので、カツや天ぷらのようにちょっと油分を加えるような料理法が向いています。また、畜肉の中では牛肉の赤身に感じが似ているので、厚めに切ってバターで両面を焼いてステーキソースで食べるというのもオススメです。もし自宅にフードプロセッサーやミンサーがあれば、ミンチにしてみるのもよいかもしれません。シカ肉のミンチは適度に歯ごたえがあり、ハンバーグやそぼろにすると好評です。たくさんのシカ肉を手にいれた時は、ミンチにして冷凍しておくと使い勝手も良いです。
狩猟で捕れる獣肉は、出荷年齢や飼料などが統一された家畜の肉と違って、年齢や捕れた場所・時期によってさまざまな個性があります。せっかく獣肉を食べる機会に恵まれた皆さんは、ぜひその動物のことを想像しながらそれぞれの肉を味わって食べていただけたらと思います。
狩猟に興味を持ち、今年狩猟免許を取得するべく勉強中です。
銃には全く興味が無く、ワナを中心に考えていましたが、兼業猟師ってできるのかなぁ?と考えていたときに、偶然に千松さんの本に出会い、感銘を受け、狩猟免許受験の動機付けになりました。
これからも執筆してほしいです。
(2010.06.08)
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