猟期の終わり、それは旧暦の正月明け、ちょうど本来七草粥を食べる時期に重なります。新暦の1月7日にはまだ縮こまっているハハコグサやコオニタビラコもこの時期にはだいぶ元気になってきています。ただ、春の七草で実際に採集するのはセリくらいです。スズメ捕りに行く水田地帯のあぜ道にはタゼリがよく生えていますし、近所の水辺にはミズゼリが群生しています。セリは牡丹鍋にも合いますし、お吸い物やお浸しにしてもその香りがたのしめます。
この時期によく採取するのがノビルの鱗茎(りんけい)【1】。小さいラッキョウみたいな形で、加工も同様に甘酢漬けや味噌漬けにします。実はこのノビル、年中いつでも採取可能なのですが、他に緑のものが少ないこの時期に採るのが習慣になっています。
そうこうしているうちに、フキノトウが顔を出し、気づいたら野原一面にツクシがにょきにょき…。本格的な山菜・野草シーズンの到来です。
猟の合間に切り出しておいたクヌギやコナラの原木にシイタケの種駒【2】を植菌するのも、春の行事のひとつです。直径15cm、長さ1mほどの原木にドリルで列を交互にずらしながら千鳥状に直径1cm弱、深さ2cm程度の穴をあけ、木槌で種駒を打ち込みます。これを家の裏など、直射日光が当たりすぎず比較的湿度の高い場所で適切に管理すれば、翌年の秋から4・5年は収穫が楽しめます。シイタケ以外にナメコやヒラタケ、クリタケなどの種も販売されているので、余力があれば色々やってみるのも楽しいです。
最近はナラ枯れによるコナラの枯死木が多いので、それを切り倒した時に、キクイムシの入った太い幹の部分は薪に、虫の入っていない細めの枝の部分をキノコ栽培の原木に利用するのが効率が良いと思います。その先のさらに細い部分は焚きつけに利用します。
シイタケは春と秋に集中して出るので、適宜利用しつつ使い切れない分は薪ストーブの上にザルをぶら下げて乾燥させます。しっかり乾いた干しシイタケを乾燥剤と一緒に保存すれば、年中利用可能です。
私自身は子どもが生まれてからなかなか行くことができていませんが、まだ雪の残る渓谷では、アマゴやイワナを対象とした渓流釣りが解禁になります。本流でも釣れますが、支流をどんどん登りながら釣っていくのが楽しいです。早春の山の空気に触れつつ、竿を振る。川幅1mもないような沢に1尺(=約30.3cm)を超える大きさの尺イワナが潜んでいることもあります。釣った魚は塩焼きや天ぷら、燻製にしていただきます。きれいな川に暮らす渓流魚は臭みもなく、大変美味しいです。
渓流釣りの合間には、山の中の自然の営みがいろいろ目に入ってきます。猟期を生き延びた立派なオスジカの抜け落ちた三段角を見つけると、季節の移り変わりを感じます。前回ヒキガエルの交尾を目撃した水たまりには、いつのまにか可愛いオタマジャクシがたくさん泳いでいます。
雪がとける頃、渓流沿いにはワサビやミズナなどの山菜が芽吹きます。それらを摘んで帰るのも、渓流釣りの楽しみのひとつです。
この季節は、春の訪れをそこかしこで感じながら、一番気持ちがやすまる時期であるように思います。
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