私が行っているのは、銃や犬を使う一般的な狩猟法ではなく、鋼鉄製のワイヤーを使った“ククリワナ猟”です。
山の中で糞や足跡などの痕跡から“けもの道”を探り、そこにワナを仕掛けて、シカやイノシシの脚をくくって捕獲するのです。
この猟法の特徴は、ほとんどの仕掛けが自作できることと、すべて一人で猟が行えることです。現在は、便利なのでワナの部品にワイヤーや金属・塩ビのパーツを使っていますが、その気になればすべて自然物で作成することが可能です。小さいころから無人島で暮らしたかった私にとっては、最適の猟法だというわけです。
ククリワナ猟では、事前にどれだけ山を見ているかが、猟期に入ってからの猟果を大きく左右します(日本のほとんどの地域では、狩猟して良い期間が11月15日から2月15日となっており、これを猟期と呼びます)。
最低でもひと月前から頻繁に山に行き、獲物の痕跡を調べます。糞や足跡、イノシシならドロ浴びをする“ヌタ場”と言われる場所の使用状況や“けもの道”沿いの樹木への泥の付き具合、牙跡など。これらの情報から、見えない獲物の姿と行動を推測します。
「この道はイノシシの寝場所からコナラの木がたくさん生えている餌場に続いていて、50kgくらいのメスイノシシが20kgくらいの2頭の仔イノシシを連れて頻繁に通っている」
というような感じで。
そうして、獲物の多く通っている“けもの道”を見定めて、猟期に備えます。
ただ、秋の山は魅力がいっぱいで、イノシシの跡を辿っていくと、イノシシの大好物の自然薯の群生地帯に到着し、気づいたらその“ムカゴ”採りに夢中になってしまうこともしばしば(ムカゴは、自然薯の葉の付け根にできる小さな丸い芽のことで、炊き込みご飯やバター炒めにして食べます)。それ以外にもマタタビやサルナシ、アケビなどの果実や、シメジやマイタケ、ナメコ、キクラゲなどのキノコ達にも目を奪われてしまいます。
まあ、これらも広い意味では狩猟のおかげで手に入る食料な訳ですが。
野生動物、特にイノシシは嗅覚が非常に優れています。ワナの金属・油臭や人間のにおい等に大変敏感で、それらが自分の行動範囲にあると警戒して行動パターンを変えたり、ワナを見破ったりすることもあります。
なので、私が使うワナも入念ににおいを消します。特ににおいがきついのが鋼鉄のワイヤー。これらは山で採ってきておいたカシやクスの木の樹皮とともに、10時間以上煮込みます。また、それ以外のパーツも樹皮の煮汁に漬けておいたり、土に埋めたりしてにおいを消します。
こうした準備をいろいろやっているうちに、気づけば秋も深まり、狩猟解禁の11月15日(実は私の誕生日!)がやってくるわけです。
とても感慨深く読ませていただきました。
私も京都にすんでいますので、ぜひ一度お会いしたいです。
(2010.02.10)
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