今年もついに、猟期が始まりました。解禁日の11月15日から数日かけて山にククリワナを仕掛け、その後は毎日欠かさず山を見回る日々が続いています。
私の場合、平日は普通に仕事をしていますので、見回りは出勤までの数時間と仕事後の数時間をかけて行うことになります。
なぜ毎日?と思われるかもしれませんが、ワナ猟の場合、獲物がいつかかっているかは行ってみないと分かりません。ワナにかかった獲物は当然暴れるので、時間が経つとだんだん弱ってきますし、何日も放置すると場合によっては死んでしまうこともあります。ですので、猟期中は雨の日も風の日も、毎日の見回りは欠かせないのです。
毎日見回りをしていると、狙っている獲物の行動もいろいろ把握できます。ヌタ場の使用跡や足跡、糞などでいつ頃にどういうコースを辿ったのかがわかります。なかには、ワナの直前でUターンしているものや、ワナにかぶせてある落ち葉などを全部どけて、「ここにあるのわかってるよ」とばかりにワナを丸裸にしていく賢いイノシシもいます。
狩猟が解禁となって1ヶ月ほど経った現在で、シカ4頭、イノシシ2頭が獲れました。私が暮らす京都では年々シカの数が増えています。最近ではイノシシを狙ってワナをかけてもまずシカがかかるというような状況で、思うようにイノシシが獲れません。
また、今期は、カシノナガキクイムシによる食害【*】でコナラの木を中心とした大量枯死が京都の山にも広がってきたため、餌のどんぐりを求めてイノシシの行動パターンが変わってきています。これまで良い餌場のあった猟場に全然イノシシが寄り付いていないのです。そもそも、イノシシは秋の主食となるどんぐりの落果時期に合わせて、行動範囲を変えてきます。コナラのどんぐりが落ちる頃はこのけもの道を使うけど、アラカシの頃にはあっちのけもの道ばかり、といった感じで。なので、ワナ猟師は毎日の見回りの中で、それらの変化を敏感に察知し、解禁の頃に仕掛けたワナの配置を微妙に変化させていかなくてはなりません。
実は今期は、解禁直後に手痛いミスをしてしまいました。ワナをかけた数日後、あるワナに小さめのシカが掛かったのですが、少し暴れた後に逃亡しているのです。これは暴れた痕跡や現場に残った体毛などから判断できます。
その時は、掛かりが浅かったんだろうとあまり気にせずワナを再設置したのですが、その後なんと連日の逃亡。計シカ3頭、イノシシ1頭です。これはさすがにおかしいと思い、よくよく考えてみると、今期はワナの“締まり防止金具”の設定位置を変更したことを思い出しました。
この金具はワナが締まりすぎて、脚を痛めてしまったりしないようにするもので、タヌキやキツネなどの小動物が間違ってワナを踏んだ場合も脚を抜いて逃げられるようになっています。
昨年、大きなアライグマが掛かったので、今期はこれまでよりちょっとだけ緩めに設定したのですが、それがアダになったようです。いやはや、狩猟生活9年目にしてなんともお恥ずかしい失敗でした。
解禁後1週間経った休日に大急ぎで全てのワナの設定をやり直したところ、無事翌日にはメスジカが1頭かかりました。獲物がかかっていたらその場でトドメをさし、血抜き・ハラ出し(すばやく内臓を取り出して冷やすこと)をして山からおろさないといけません。
瞬時に携帯電話で時間を確認し、一連の作業にかかる時間を計算し、会社に遅刻しないかどうかを確認しないといけないのは兼業猟師のツライところです。また、他に獲物がかかっているかもしれないので、一旦その現場を遠巻きに見ながら離れ、他のワナを全部見て回ります。これらをすべて終えて、いよいよシカと向きあうことになります。
解体作業の実況は次号で!
いつも楽しく拝見してます。
千松さんの書籍もとても興味深く、なんどもよんで狩猟生活の
厳しさと、豊かさを感じています。
(2010.01.29)
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