獲物の解体は、夕方から行うことが多いです。平日は仕事がありますし、休みの日は明るいうちはじっくり山に入ることにしているからです。また、夜の方が気温が低く、肉が傷みにくいので解体には好都合です。基本的には猟仲間数人で協力して行いますが、猟や解体に関心のある友人・知人が参加することもしばしばです。
猟を始めた頃は、解体にもたいへん時間がかかり、気づいたら夜明けということもありましたが、最近は、シカなら1?2時間、イノシシは3?4時間で終えられるようになりました。
シカの場合は後ろ脚を縛って吊るした状態で皮を剥きますが、イノシシは解体テーブルの上で作業します。シカの皮は剥ぎやすいので、慣れれば10分ほどで済みます。イノシシは皮と肉の間に分厚い皮下脂肪の層があり、その部分が大変美味しいので、そこをなるべく皮に残さないように慎重に剥かないといけません。普通のサイズのイノシシでだいたい1時間くらいはかかります。
ちなみに、皮剥ぎの際に注意しないといけないのがダニです。山の獣にはたくさんのダニがついており、噛まれると厄介です。ダニは動物の体温に反応して寄ってくるので、油断すると腕にひっついていることがあります。最近私はダニが付いたらすぐにわかるように白い服を来て作業をするようにしています。
皮を剥ぎ終わったら、今度は肉から骨をはずしていきます。シカの場合は、四肢を胴体からはずして、それぞれ骨を抜きます。残った胴体からはヒレ・ロース・クビ・バラといった部位の肉を取ります。
それに対してイノシシは、背骨の中心をノコギリで真っ二つに切る“背割り”という方法を行います。これは、イノシシの肉で特に美味しいとされるロースやバラといった部位を取りやすくする解体法で、屠場などでの豚の解体法と同じです。
半割りにしたイノシシからはアバラを一本ずつはずし、背骨などもはずします。そして、最終的には半身のイノシシは全てつながった状態の肉になります。
こうして、骨をはずした状態の大きな塊の肉を保存・調理しやすいサイズに切り分け、パックして冷凍保存します。
さて、普通のお肉の話はここまでですが、残ったものがいくつかあります。
まずは、最初に出た毛皮。これに関しては私もまだ試行錯誤中ですが、基本的にはなるべく皮なめしをして、敷物やかばん等に加工するようにしています。ただ、猟期中は忙しいので、とりあえず解体で出た皮は冷凍か塩漬けにして保存しておきます。
次に頭部にも利用できる部位があります。まずは普通に食べて美味しいのがホッペタと舌。イノシシだと頑張って毛をむしれば、鼻や耳もなかなかの珍味です。また、脳みそも食べられますが、取り出すのが大変なので、ふだんは食べません。
あと、はずした骨はまるごと煮込んだらスープ(だし)が取れます。特にイノシシのスープは本当に濃厚で、豚骨のように白くて美味しいスープができあがります。
生き物の命をいただく以上、できる限りムダにすることなくその恵みを利用していきたいと考えています。
貴殿のヒトを含めた全体としての自然の捉え方には共感を覚えます、言葉を弄して語る人々も沢山いらしゃいますが、すべてを理解するにつれもはや言葉は必要なくなってくるのが自分でも可笑しく思います。
小生も鹿児島の山奥で獣を取りながら暮らしております、貴殿のますますの精進と安全を祈ります。
(2013.02.09)
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