今葡萄畑は、とても気持ちのいい季節。開墾以来50余年、除草剤を撒いたことのない私たちの葡萄畑は、タンポポ、ヒメジョオン、アザミ、シロツメクサ…色とりどりの花が咲いています。【1】
ところで、葡萄の花は何色でしょうか? その前に、葡萄は花が咲くのでしょうか?
実のなる植物ですから当然花が咲きます。では葡萄の花の色は、白? 黄色? ピンク?
答えは、薄黄緑色です。花が咲かないと思われているような植物は、みんな葉っぱや茎と同じような緑色の花を咲かせます。だから「花の色の中で一番多いのは緑色」と、ラジオの「こども電話相談室」では教えていました。植物の生存と繁殖のための器官でもある花は、一般的に、虫に花粉を運んでもらう植物は目立つ花をつけ(虫媒花)、風に花粉を運んでもらう植物は地味な花(風媒花)が多いのです。
原料となる葡萄の品種のことをワイン用語では「セパージュcépage(仏)」といいますが、ワイン用、生食用、干しぶどうなどの加工用も含めて、葡萄の品種は世界中で1,000?8,000種以上あるといわれています。同じ品種でも育つ場所や環境が違うと、異なった葡萄品種のように育ちますし、自然にも、また人工的にも、たくさんの交配種が生まれていることから、葡萄品種の数は、限定のしようがないのかもしれません。【2】
こんなにたくさんの種類があっても、葡萄の花は薄黄緑色。
原始的な植物が雌雄異株であるように、葡萄の祖先や、山ブドウなど野生の葡萄には雌雄異株のものが多くみられます。そのうち、特殊だった両性花(雌雄同体株)のものが、長い時間を経て、選別され、その両性花のうち実がたくさん得られるものが選ばれてワインの原料として品種改良されてきました。現在、人間が利用している葡萄のうちほとんどの葡萄の花は、雄しべと雌しべだけのシンプルなものです。
バラの花が咲く頃、葡萄はひっそりと目立たずに花を咲かせます。人が見ていてもいなくても、葡萄は静かに花を咲かせ葡萄畑には葡萄の花独特の香りが漂います。葡萄の花の花言葉は、好意、信頼、思いやり、親切…忘却や陶酔、なんていう言葉もあるようです。
ワインづくりのカレンダーでは、葡萄の花が咲いて100日目が葡萄の収穫のときと言われています。ワイン用の葡萄は、場所によって、またその年の気候や葡萄品種によって収穫期は異なりますので、私たちの葡萄畑では、8月中旬から11月まで、葡萄の開花から80 ?150日で収穫といったところです。ヴィンヤードサンプルを細かく採取しながら、全体の味のバランスを見て、葡萄が「とってね」という時期をとらえて収穫します。葡萄は醸造場に運ばれ、野生酵母(葡萄の果皮についた自然の酵母)によって醗酵しワインになります。そして、葡萄畑でひっそりと目立たぬ花を咲かせた葡萄は、食卓でワイングラスに注がれて、それぞれに香り豊かで美しい花を咲かせてくれます。
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