時に日本の田舎のワイン屋は、思いがけないご質問を頂戴することがあります。
「ワインと葡萄酒はどこがちがうのですか?」
ワインはグラスで飲むけど、葡萄酒は茶碗で飲む?
750mlのワインビンに入っているのがワインで、1升ビンに入っているのが葡萄酒?
どれもあっているような気がしますが、とりあえずワインの語源からいってみましょう。
次のアルファベットをご覧ください。
矢印の前と矢印の後、この5つのヨーロッパの国のアルファベットの組み合わせは、すべて同じ意味です。
右(矢印の後)のアルファベットの意味は…ワイン? そうですワインです。
では左(矢印の前)のアルファベットの意味は…「葡萄の木」なんです。例えば英語。葡萄の木:VINE(ヴァイン)のV(ヴィ)がW(ダブリュー)になると葡萄酒:WINE(ワイン)、というわけ。このように、葡萄の木になる葡萄から作られるのが葡萄酒です。
ですから「ワインと葡萄酒の違いは、ワインは英語で葡萄酒は日本語」ということです。これが最初のご質問に対する答え。「なぁんだ」ですね。ワインは工業製品ではなく、農産物であることをどうぞお忘れなく。
ところで、ワイン=葡萄酒は、日本の酒税法による酒類の分類では果実酒になります。果実酒(かじつしゅ)とは、果実を原料として発酵させたアルコール飲料と規定されています【*】。
地元の農産物加工所や道の駅などに並んでいる、苺ワインとか梅ワインとか柚子ワインとか、これは日本の酒税法の分類では果実酒ですが、世界的な分類ではワインではなくリキュールだそうです。リンゴから作られるのはシードル。シードルはフランスのブルターニュ地方やノルマンディー地方のものが有名ですが、昨今、東日本でも発泡性のある美味しいシードル(りんごのお酒)がつくられるようになりました。
葡萄からつくられるのがワイン…ワインは葡萄からつくるという原則をもとに、さて次の質問です。
ワインをつくるために最低限必要な3つとはなんでしょう?
まず、葡萄ですよね。あと2つは? 酵母(=イースト)? 水? 砂糖? 酵母も水も糖分も葡萄のなかにありますから必要ないんです。
実はワインをつくるために最低限必要な3つは、葡萄とバケツ(容器)と人間の手(の働き)です。
まず、1)元気な葡萄を用意しましょう。2)きれいなバケツのなかに、3)きれいな手でつぶした葡萄を入れましょう。…レシピはこれだけ。大体、1本(750ml)のワインをつくるために約1kgの葡萄が必要です。
注意することは、葡萄を洗わないこと。葡萄の表皮にいる野生酵母(天然酵母)が葡萄に含まれているぶどう糖をアルコールと二酸化炭素に分解します。言い換えると、微生物である酵母(サッカロミセス セルビシエ Saccharomyces cerevisiae)が働いて、ワインをつくるのです。光合成と醗酵の化学式を簡単にまとめると次のようになります。
12H2O(水)+6CO2(二酸化炭素)
→C6H12O6(ぶどう糖)+6O2(酸素)+6H2O(水)…光合成
C6H12O6(ぶどう糖)
→2C2H5OH(アルコール:ワイン)+2CO2(二酸化炭素)…アルコール発酵
ケンメイな皆さまならご存知のように、シンプルなつくりのものほど奥深く、大変で面白い。パンもお蕎麦もお醤油も…。というわけで、次回からは、葡萄畑や醸造場でのお話を少しずつできるだけ簡単に、させていただきます。
追伸:ワインをつくるために最低限必要な葡萄と容器と人間の手、日本ではこれに『果実酒類果実酒製造免許』が加わりますので、日本でワインをつくるためには最低限4つのものが必要ということになります。
ただし、日本では酒税法で酒類の製造が規制されているので、個人が自家消費用にワインを作ることは非常に難しいのです。
ちなみに、欧米でも販売用のワイン醸造に関してはそれなりの社会的規則があるようですが、自家消費用のワインやビールは自由につくれるそうです。
収穫したブドウを洗ってはいけないこと、初めて知りました。有機葡萄酒の値打ちを改めて実感できました。。
(2018.05.21)
ワイン大好きです。
ワインとエコライフがどのようにつながっているのでしょう?
これからの記事を楽しみにしています。
(2011.09.03)
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