オリンピック・パラリンピックといえば“参加することに意義がある”と言われますが、4年間の取り組みの成果がメダルとして結実することは選手にとっても、競技にとっても、そして応援する人たちにとっても大きな意味を持っています。
そんな金・銀・銅のメダルを、家庭に眠る不要になった携帯電話等の小型電子機器から取った貴金属を原料にして製作しようという「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」が呼びかけられています。
全国のドコモショップで使用済み携帯電話・スマートフォン・タブレットを回収しているほか、全国521の市区町村がプロジェクト参加自治体としてプロジェクトへの参画を公表(4月19日現在)し、専用回収ボックス等によって、使用済み携帯電話、パソコン、デジタルカメラ等(主に小型家電リサイクル法に基づく28品目)の回収を行っています(回収品目・回収方法等は各自治体によって異なるので、詳細は回収自治体にお問い合わせください)。この他、認定事業者による宅配回収もできます。
大会で使う約5000個のメダルを製作するために必要となる金属を集めるには、携帯電話にして2千万台が必要とのことです。
「都市鉱山」とは、都市部で一度利用された希少金属資源を、回収・リサイクルすることで、潜在的に再利用できる状態にあることを指します。これらの希少金属資源などがもともとは自然の鉱山から採掘されたのに対比して使われるようになった概念です。具体的には、廃棄処分になった家電製品の中の金属や、工場で廃棄になった端材などをリサイクル処理し、資源として再利用するわけです。
資源循環型社会を構築する上でも非常に重要な概念ですが、廃棄物、スクラップの効率的な回収方法が確立されていない、リサイクル処理するための技術開発が十分ではない、廃棄物やスクラップに対し資源であるという考えが浸透していないなど、実現に向けた課題も多いのが現実です。
「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、オリンピック・パラリンピックという多くの人の注目を集める世界的なイベントを契機に、都市鉱山の存在と意義をアピールし、回収・再資源化への機運を一気に高めることがねらいの一つと言えます。
日本は、電子機器の生産・消費量も多く、世界有数の都市鉱山大国であると言われます。金は6800トンで世界埋蔵量の16%、銀は6万トンで22%、インジウムは1700トンで15.5%、スズは6万6000トンで11%。バッテリーなどに使われるリチウムに至っては、地球全体で1年に消費する量の7倍以上の量が、潜在的に資源として存在するとされています。
これら希少な金属資源のことを「レアメタル」と言います。資源としては存在量が少ない、もしくは存在量が多くても採掘が難しいため産出量が少ない希少金属の総称です。
レアメタルには、プラチナ・モリブデン・コバルト・ニッケルなど、31種類があります。携帯電話のバイブレーション用モーターや、デジタルカメラの手振れ補正機能、液晶パネルなど身近な機器の中に使用されています。
レアメタルの枯渇や価格高騰が危惧されています。レアメタルが希少な理由としては、資源として存在量が少ない、レアメタル単体を取り出すことが困難、精錬のコストが高い、などが挙げられます。日本では、経済安全保障の理由から供給停止等の障害に備えて、ニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、バナジウムの7種類のレアメタルについて、国内消費量の約35日分を官民で備蓄しています。それとともに、大きな期待が寄せられているのが、「都市鉱山」の存在というわけです。
携帯電話からメダルをつくるというのはわかりやすいキャンペーンですが、それだけが目的ではなく、オリンピック・パラリンピック後の資源循環型社会の確立を視野に入れた取り組みとして、大いに意義のあるプロジェクトということが言えるわけです。
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