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「用語解説から読み解く環境問題」バックナンバー

0032014.08.19UPラスカルたちの逃亡劇

 今年(2014年)の春先、井の頭公園の水が抜かれ、池底が姿を現しました。池の中からは230台以上の自転車が引き上げられるなど、マスコミにも大きく報道され、注目されたのも記憶に新しいところです。この水抜きは“かいぼり”と呼ばれる管理手法で、2017年の開園100周年に向けた水質改善および外来生物の駆除を目的に実施されたものです。自転車とともに、ブルーギル(約1万3000匹/全捕獲個体数の約6割を占める)やブラックバス(約1200匹)、さらにソウギョなど1mを超す大型の外来魚(20匹)などが捕獲されています。
 かいぼり自体は、2月の大雪の影響もあって、池底の天日干しが十分にはできなかったりと、一度で劇的な効果を上げるものではありませんが、3月に水を戻して以来、池の水は透明度が上がるとともに、かいぼり前には壊滅状態だったカイツブリが3つがいほど戻ってきているという観測結果もあります。開園100周年に向けて、今後2回のかいぼり実施が計画されています。

在来魚のモツゴ
在来魚のモツゴ

外来魚のブルーギル
外来魚のブルーギル

施行から5年が経った外来生物法の改正

 かいぼりで駆除されたブルーギルやブラックバスなどの外来生物は、元の生態系に大きな影響を及ぼし、日本全国で深刻な問題となっています。そんな外来生物への影響を防除するために制定されたのが、外来生物法です。
 外来生物法は、2004年6月制定、2005年6月より施行した、外来生物(移入種)による生態系等への影響を防止するための法律。海外からの移入生物による、日本の生態系、人の生命や健康、農林水産業への被害を防止するために、飼養、栽培、保管又は譲渡、輸入などを禁止するとともに、国等による防除措置などを定めています。
 外来生物とは、一般的に人為により自然分布域の外から持ち込まれた種や亜種、あるいは生存して繁殖が可能な器官や配偶子、種子等を含む分類群のこと。自然に分布するものと同種であっても他の地域個体群から持ち込まれた場合も含まれます。
 奄美・沖縄のマングース、小笠原のノヤギ、アノールトカゲのように在来種の絶滅を招くような重大な影響を与えるものも少なくなく、在来の生物種や生態系に様々な影響を及ぼすため、生物多様性の保全上、最も重要な課題の一つとされるようになっています。

アニメ番組がきっかけになったアライグマの輸入・飼育

アライグマ捕獲のために設置された箱ワナにかかった子タヌキ
アライグマ捕獲のために設置された箱ワナにかかった子タヌキ

 例えば、食肉目の中型哺乳類のアライグマは、国内では1960年代から野生化の報告があります。アニメ番組等をきっかけにペットとして多くの個体が輸入されたことに伴い、逃亡、遺棄が増加し、1980年代には北海道で野生化したものが見られるようになり、現在ではほとんどの都道府県に分布しています。
 夜行性で木登りや泳ぎが得意で水辺を好む反面、都市環境にも適応できる柔軟性があります。雑食性で小動物、昆虫等を捕食するためキツネやタヌキなどと競合するほか、野菜・果実・穀物などの食害をもたらすことから狩猟獣に指定され、有害鳥獣駆除も実施されています。2005年6月、外来生物法の特定外来種に指定されました。

悪いのは外来種か!?

 冒頭のかいぼりで最も多く駆除されたブルーギルは、スズキ目サンフィッシュ科の淡水魚。北米南東部原産の移入種で、体長は約25cmと小ぶりの魚です。
 日本に最初に持ち込まれたのは、1960年にアイオワ州のミシシッピ川で採集された親魚17尾でしたが、その後、これらをもとに繁殖した個体が各地に移植され、大雨や洪水などによって養殖池から逃げ出したり、釣り関係者による放流も手伝って分布域が拡大、現在では北海道から沖縄まで分布しています。
 当初問題視されたブラックバス(オオクチバス)と異なって魚食性はそれほど強くはありませんが、雑食性で水生昆虫から水生植物まで様々なものを食べる柔軟な食性と強い繁殖力によって、各地で定着し、在来生態系に大きな影響を与えています。現在、多くの県の条例で移植放流が禁止され、新潟県と岩手県では内水面漁場管理委員会指示により生きた状態での再放流(リリース)も禁止されています。さらに、滋賀県の琵琶湖では県の条例として初めて再放流の禁止を決定し、これを平成15年4月から施行しました。

 

 アライグマやブラックバスなどのように、外来生物のうち特に大きな影響を及ぼす生物を「侵略的外来種」と呼んで、対策を強化しています。“侵略的”なんていうと、よほどの悪役のような響きもあります。ただ、これらの生物も本来の生態系の中ではごく普通に生活していた生き物です。安易な輸入・飼育や放棄によって深刻化していった外来生物問題。被害予防のための三原則として、環境省では「入れない」「捨てない」「拡げない」を掲げて、協力を呼び掛けています。まずは身近な問題として多くの人が関心を持っていくことが必要と言えますね。

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このレポートへの感想

エコナビ編集部です。
ご指摘ありがとうございました。
環境用語集については、
http://www.eic.or.jp/ecoterm/?gmenu=1
のページ文末に記している通り、現在一斉点検作業を行い、
随時見直しているところです。
今回いただいたご指摘も踏まえて、見直しに反映していきたいと思います。

今後ともEICネットおよびエコナビをよろしくお願いいたします。
(2014.08.28)

対応ありがとうございます。

しかし、“「移入種」の定義をそのまま外来生物の定義として流用”したとありますが、流用元の移入種の定義も微妙に間違っているんじゃないでしょうか?

もともと移入という言葉には、意図的に導入するというニュアンスがありますので、それを意図的であるかないかを問わない外来生物(あるいは外来種)と同義的に扱うのは、それもまた余計な誤解を招く恐れがあります。

また、誤解の実例としては、移入種は国内由来で、国外由来のものは外来生物(外来種)と呼ぶと思っている人が多くみられますが、最近の生物学の用語辞典などでは、「外来生物(外来種)」は載っていても、「移入種」は、まず載っていません。

これは何故かというと、生物学的に見れば、問題は結果であって、その過程が意図的であるかどうか。また、国外由来か国内由来かなどは問題ではないのですから、当然なわけです。

以上のことから、ここで使われている外来生物の関連用語だけでも一度整理したほうが良いのではないかと思われます。

以上。
再度の長文、失礼しました。
(2014.08.28)

ご指摘、ありがとうございました。
元の文章は「移入種」の定義をそのまま外来生物の定義として流用してしまったことで誤解を与えることとなりました。
謹んで訂正いたします。

今後とも、EICネット「エコナビ」をよろしくお願いいたします。
(2014.08.26)

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