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「自然と共存するオーストラリアの住まい」バックナンバー

0042011.03.16UPオーストラリアの僻地・アウトバックの暮らし方

電気も水道もないオーストラリアのアウトバック

どこまでも森だけが続く、人口希薄地帯“アウトバック”
どこまでも森だけが続く、人口希薄地帯“アウトバック”

 オーストラリアは沿岸部の人口集中エリアを除き、ほとんどが人口数人から数百人程度の過疎地。こうしたリモートエリア(遠隔地)は、「アウトバック」と呼ばれ、人々の暮らしは想像以上に大変です。

電気事情

アウトバックに1軒だけある農場
アウトバックに1軒だけある農場、インフラはすべて自分たちでまかなっている。

 電気は通っていませんので、基本的に自家発電です。日の出と共に起床、日没後は早めに就寝。夜はランプなど、限られた明かりで過ごします。広く開けた場所では松明などで明かりと暖をとります。
 電化製品は基本的に、冷蔵庫優先。それも開閉は極力少なくし、一日に何回と決めておくなど、緊急でない限りは開けない。これでかなりの節電になりますし、少ない電力で保冷効果が維持できて、中の食品の傷みを防ぐことになります。

遠くに見える町の外は何もない荒野が続く
遠くに見える町の外は何もない荒野が続く

 アウトバックではありませんが、ここシドニーでも停電は日常茶飯事。冷凍庫には保冷剤を常備しています。冷凍庫に余裕がある時は、水を入れたビニール袋やペットボトルを冷凍しておきます。短時間ならそのままで、長引きそうな時は、重要度の高いものから順次少し大きめのアイスボックスに入替えたりすることで、かなり長時間の保冷が可能です。
 不要なコンセントは抜くのはもちろん、テレビも見終わったら必ず抜く。寝るときは、手元に懐中電灯を置き、トイレなどで夜中に起きた場合はそれを点灯。つまり、夜間は冷蔵庫のみが電源を使用しています。

水道事情

アウトバックでは地下水と雨水だけが頼り
アウトバックでは地下水と雨水だけが頼り

 水道ももちろんありませんから、地下水を汲み上げられるところは地下水を使い、それ以外にも雨水は必ず溜めておきます。各住宅に雨水タンクは必須で、家より大きなタンクを設置しているところもあります(詳細はこのシリーズ第一回でご紹介しています)。
 水が濁っている場合は、以下のことを実践します。

  1. 底を切ったペットボトルを逆さまにし、その中に注ぎ口から出ない程度の小石、炭(焚き火の燃え残り可)、砂、布の順番で入れる。
  2. 布の上から泥水を注ぎ、下から出てきた水を煮沸。
 これで、泥水でもほぼ安全な飲料水になるようです。できれば最低10分は煮沸した方が、より安全です。
 人間は、3週間食料を摂取しなくても生きられるそうですが、水を飲めない状況ではほぼ確実に3日で命取りになるそうです。

水がないと命取りになるアウトバック
水がないと命取りになるアウトバック

 アウトバックで遭難した場合、近くに草があれば、黒いビニールなどに青草を入れ、そのまま太陽の下にさらしておくだけでも草の水分が蒸発し、多少の水を得られるそうです。

トイレ事情

 水洗トイレも、もちろんありませんから、日本でいうところの“汲み取り式”同様、穴の上に便器を設置した便槽式です。こちらではピットトイレと呼び、一般的にはコンポスト式トイレとして知られる、微生物処理トイレです(これについても、第一回をご参照ください)。

通信・交通事情

国道沿いに1軒だけあるアウトバックのロードハウス、隣の民家までは200km以上
国道沿いに1軒だけあるアウトバックのロードハウス、隣の民家までは200km以上

病院まで数百kmもあるアウトバックでは欠かせない医師“フライングドクター”
病院まで数百kmもあるアウトバックでは欠かせない医師“フライングドクター”

 電話回線はもちろん、携帯の電波も届かないところが多いので、主に衛星電話を利用しています。地上から衛星を経由して別の地点とつなぐため、上下各約3万6千キロの通信距離を必要とし、通話に時間差が生じるという不便はありますが、電話線やアンテナ基地などの地上設備がない地域でも利用可能です。

 アウトバックでは、買い物も数百キロ離れた町まで行かねばならないなど、ふだん都市部に暮らしている私たちには思いもよらないほど、不便な暮らしをしています。といっても、彼らにとっては不便でも何でもなく、当たり前の暮らしなのですが。

 アウドドアの達人ともいえるアウトバックの住人たちの暮らしぶりは、災害時にも十分役立つものばかり。今後に備えて、また、趣味と実益を兼ねてアウトドアやキャンプに目を向けてみてはいかがでしょうか。

どこまでもまっすぐな鉄道、次の駅は600km以上先
どこまでもまっすぐな鉄道、次の駅は600km以上先

どこまでもまっすぐな道路、次の町までは300km以上ある
どこまでもまっすぐな道路、次の町までは300km以上ある


※今回は予定を変更させていただきました。
 去る3/11に発生した東北地方太平洋沖大地震では、被災地はもとより、都市部でも計画停電などで、不便な暮らしを余儀なくされている方々も多いかと思います。近代的なインフラ設備が整っていないアウトバックでの暮らしぶりは、こうした事態においても、また、今後の災害に備えても、役立つことも多いのではないかと思いますので、参考になると幸いです。

 前回告知した、オーストラリア北部の世界遺産エリアで、自然豊かな太古の森を守りながら共存を果たしている住民たちの奮闘ぶりは、次回ご紹介いたします。

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