オーストラリアには、都市部の住宅街であっても自然を身近に感じられる、“リザーブ(保護区)”と呼ばれる場所がたくさんあります。そこには、人が手を入れて整備した公園や庭園には見られない、本来の生態系がそのまま残されています。
野生のままに生い茂る木々や草花、そこを棲家とする野生動物たちは、人間にとっていわば隣人。お隣さんに迷惑をかけないように住むため、住宅そのものにも周辺に及ぼす影響を最小限に留め、景観にとけ込む工夫が求められます。オーストラリアでは、そのための規制措置を各自治体が定めています。
例えば、緑の森の合間から奇抜な人工建造物が見えるのはご法度。家のデザインも可能な限り自然と調和するものでなければならないなど、住宅建築に関する様々な制約が設けられています。外壁や屋根の色は周囲の自然に違和感なく溶け込むナチュラルカラーのみとする自治体もあり、オーナーの好みだけで家の色を決められないところも少なくありません。
建物だけでなく、庭についても同様です。自分の庭であっても、自生している在来種(ネイティブ種)の樹木を勝手に切り倒すことはできません。事情を説明し、自治体から伐採許可を得る必要があります。また、ガーデニングで好きな花を勝手に植えられない地区もあります。特に植物の増減は、周囲の生態系に変化を及ぼす可能性が高いため、新たに植える場合は、できる限りその地域固有のネイティブ植物を植えるよう、国を挙げて推進しています。
家を新しく建てる場合はもちろんですが、改築や改装だけでも厳しい規制があり、ささいな変更でも申請が必要なところがほとんどです。
我が家のある自治体は、こうした住宅規制がシドニー近郊でも特に厳しいことで知られています。目下改築の真っ只中ですが、様々な制約に阻まれ、なかなか思うように進みません。
外観の塗り替えがナチュラルなアースカラーに限定されるだけでなく、増築等で家そのものの重量が変わる場合は、必ず地質調査を行なわなければならないなど、次々と頭の痛いことばかり……。ちょっと庇(ひさし)を出すだけでも、地質調査と構造設計を入れ、新たに申請を出さなければならず、これらのコストだけでもばかになりません。たったこれだけのことに、こんな大袈裟な調査が本当に必要なの?と思うこともしばしばですが、うかつに増改築できない仕組みになっているのです。
ところが、その地質調査で、家の前に立ちはだかっている巨大な岩が、約1億5,000万年前のものだと判明。あまりの古さに驚きと感動を覚えたのはもちろんですが、この土地に対する愛着が増し、大事にしなければという意識がますます高まるきっかけになりました。
我が家のエリアでは、ガーデニングの際には外来種を避け、できる限り地域固有の植物を選ぶようにと、庭づくりに関する指導も細かく行われています。その一環として、役所が無料でネイティブ種の植物を配布し、地域の固有種や生態系を説明したパンフレットやCDを作成して住民の学習を促すなど、現実的な取り組みも行っています。
こうした取り組みは、全国的に広がっており、毎年7月の最終または8月の第一日曜日が『ナショナル・ツリー・デー(国の樹木の日)』と定められています。この日は、オーストラリア国有の樹木や植物が植えられ、生態系を維持するよう呼びかけています【*注】。
※次回は、持続可能なエコを目指し、自給自足によるB&B(ベッド&ブレックファストと呼ばれる日本の民宿のような宿泊施設)を運営しながら、環境保護に積極的に関わるオーナーの生活ぶりをご紹介します。
一億五千年前の巨岩とはおそれいってしまいます。世界遺産みたいにです。人の手を加えたのかな?と、まるで砦のように立ちはだかりますね。織への愛着が湧いてきて?、その思い大切ですね。
(2011.08.31)
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