オーストラリアの観光地には環境に配慮した施設とサービスを提供する “エコロッジ”と呼ばれる宿泊施設がたくさんあります。エコロッジの最も重要なポイントは、自然を壊さず、生かすこと。宿泊者がその地域の自然を身近に感じ、体験できることです。便利さや快適さ、豪華さを追求するあまり、周囲の環境を破壊しては元も子もありません。ですから、エコロッジは至ってシンプル。無駄を排除し、必要最低限の快適性を確保しています。
エコツアーやエコロッジなどのエコツーリズム商品に対し、世界で初めてNEAP(Nature and Ecotourism Certification Program)と呼ばれる政府認定プログラムを導入した国でもあるオーストラリアは、エコロッジの質も高く、安心して泊まることができます。
オーストラリアのエコロッジには、家族経営のB&B【1】が多いので、住宅設備や客室インテリアなど、自宅で簡単に取り入れられる住まいのヒントもいっぱい! 小規模ながら大型ホテルやリゾートでは味わえない体験ができると、海外からの旅行者からも好評です。
そんなエコロッジのお手本ともいえるB&Bが、南部メルボルンからほど近い観光地として人気の、グレートオーシャンロードにあります。経営者のシェーンさんご夫妻は、それぞれ大学で資源エネルギーマネジメントと動物学を学び、世界各地でエコシステムについての見聞を深めた後、グレートオーシャンロード沿いに広がる森の中に全5室の「グレートオーシャン・エコロッジ」をオープン。エコツーリズムに関する様々な賞を受賞するなど、各方面から高い評価を受けています。
このロッジ最大の特徴は、自然のエネルギーを最大限に活用し、地域の環境保全に力を入れていること。建物は土や木などの自然素材のみ、かつできる限りリサイクル材を使用しています。
また、電力はすべて太陽光発電、客室のバスルームで使う温水は太陽熱温水器を利用しています。広大な敷地内には大きなソーラーパネルがずらり! 水も基本的に雨水を濾過して使用。ゲストハウスで出る生ゴミや落ち葉などは、すべてコンポスト処理し、敷地内の畑へ。至るところで徹底した自然エネルギーの利用やリサイクルがなされています。
朝食はもちろん、午後のアフタヌーンティーで出されるケーキ類もすべてホームメイド。テーブルに上るのは、敷地内の自家菜園から採れた野菜や果物、放し飼いされている鶏の生みたて卵など。口に入れるものは、できるだけ素材から自家製を基本としています。乳製品などは近くの農家から仕入れ、自分たちの目が届く、安全で安心できる地元の食材にこだわっているそうです。
周辺は国立公園なので、近くに店はありませんし、高い木々が生い茂っているため、電気の供給がときおり不安定になったり、携帯電話の電波もほとんど届かなかったりするなど、決して便利なところとはいえません。ですが、その不便さを逆手にとって自然エネルギー利用や自給自足システムなど、徹底したエコを実践していることが、このロッジ最大の魅力になっているのです。
ここでは、周辺に生息する野生動物保護にも力を入れています。その活動拠点となるのが、敷地内に併設された野生動物保護センター兼有袋類病院です。交通事故に遭ったり、親を失い孤児になったりした地元の固有種、コアラやカンガルーなどの動物をケアし、再び野生に帰す取り組みを行っています。
また、夜行性有袋類がほとんどである地元の野生動物について知ってもらいたいと、夕方からトワイライト・ウォークなどの野生動物観察エコツアーも実施しています。街灯もない場所柄、夜になれば降ってきそうなほどの満天の星空――。
グレートオーシャンロードの大自然を心ゆくまで堪能でき、エコに対する取り組み方を学べる「グレートオーシャン・エコロッジ」は、環境配慮型のくらし方を提案してくれています。
※次回は、オーストラリア北部の世界遺産エリアで、自然豊かな太古の森を守りながら共存を果たしている住民たちの奮闘ぶりをご紹介します。
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