国内の農業、漁業で生産される物には「旬」があります。
では、なぜ旬があるのでしょう?それは、日本の四季を通じて生きている「生き物」だからです。水産物に限って言えば、水温の変化で移動して、エサを追いかけ、体を強くして、ペアを探し、子孫を残します。生き物が一生のうちで一番エネルギーを使うことは、子孫を残すことです。そのために集中して栄養を蓄えます。そんな状態が「旬」です。
私の友人に先祖代々「カラスミ(ボラの卵巣の塩漬け)」を作っている男がいます。昔から野母崎で作るカラスミは品質が良く、この「野母のからすみ」は「越後のうに」、「尾張のこのわた」と並んで天下の三珍味のひとつに数えられたそうです。
ご存知の通りカラスミはボラの卵巣から作ります。秋、東の冷たい風が野母崎に吹くと産卵期を迎えたボラがやってきます。ボラの群れが何百メートルもの真っ黒い帯となって泳いでいて、その様子は「いなばの白兎」に出てくるサメの橋のようです。野母崎にやってくる頃の卵巣はカラスミにちょうどいい成熟具合なので、品質の良いカラスミができたのでしょう。しかし、友人の話によると最近、環境の変化でしょうか、熟成が進んだボラが増えてきたそうです。なかには産卵を終えてやってくるボラもいるとのこと。確かに、お腹がへこんだボラが増えてきました。地球温暖化がカラスミの味にも影響しているなんて…
スズキはよく夏の魚と思われがちですが実は、冷たい北西の風が吹く12・1月が旬なんです。地元では「寒のしたらスズキの来る(寒波が来たらスズキが来る)!」と言い、シケの後は網にたくさん入っています。そのころのスズキは卵を抱え脂ものってたいへんおいしく、市場でも高値がつきます。
私の店でも冬場に、スズキを刺身で出します。都会から来たお客さんは意外な顔をしますが、食べると納得するみたいです。
長崎は毎年8月21日がイセエビ漁解禁で、それに合わせ野母崎では「いせえび祭り」を開催します。しかし、一番おいしいのはやはり産卵期直前の5・6月なんです。
メスにはたっぷりのミソのほか、内子(受精前の卵)が詰まって格別なんですが、市場に出回るイセエビは産卵を済ませ、旬を終えています。資源保護のためです。がまんしましょう!
ちなみにおいしいとわかっていても、漁師がそのころのイセエビを獲ったり食べたりすることはありません。誤解のないように。
「鰻は土用丑の日」が旬だと思っていませんか?
これは、江戸時代、平賀源内が知り合いの鰻屋のために作ったキャッチコピーだというのは有名な話です。
ウナギはふだん、人目につかないように生息しているので、生態がほとんど解明されていませんでした。が、最近の研究で、川を下り海を旅して台湾、フィリピン付近の深海で産卵が行われているということがわかってきました。
長い旅の前、川から下ったばかりのウナギは金色に輝き、いかにも「栄養蓄えてます」って色です。したがって、ウナギの旬は生息している川から下って「さぁ、卵を産みに行くぞ!」っていう秋ころです。そんなウナギ、蒲焼より塩焼きでレモンをたらして食べるとおいしいですよ!
このように、旬とは生命の営みに深く関係しているようです。考えたら農作物の旬も新芽だったり、果実だったり、種そのものだったり、水産物と同じです。
おいしいものを食べるって「命をいただく」ことなんですね。感謝して食べなくちゃ…。
「いただきます!」って。
長崎野母崎懐かしいです
(2014.03.06)
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