今回は漁師の目線から「魚食」を考えてみました。
漁師料理ってどんな料理?
漁師である私自身よくわからない料理です。マグロの産地ではマグロ料理、カニの産地ではカニを毎日食べている…そんなイメージを持っていませんか?
でも、メインの漁獲物は漁師にとって生活の糧、獲れた魚を売って漁の経費、生活費を捻出しています。なので、食卓に上がる魚は雑魚や傷物です。
以前、テレビ番組の取材依頼で「視聴者が喜ぶ豪快な漁師料理を紹介してください」と言われましたが、「漁師料理はあんたたちメディアが勝手に作ったカテゴリーだ、ほんとの漁師は普通の人と変わらないものを食ってるよ!」と言って丁重にお断りしました。(後で分かったことですがT・ジョージの番組だったようで、断ったことを後悔しています!)
そうは言っても、都会の人より魚の消費量は多いようです。あえて言うならば、雑魚や傷物の魚こそが漁師料理ではないでしょうか。鮮度落ちが早いそれらの魚は、ほとんどが刺身で食べられています…「やっぱり漁師は新鮮な刺身をよく食べてるじゃないか!」と思っているでしょう。正解です。というより、新しい魚がたくさんあるので魚メニューの努力をしないんです。漁師町の漁師料理は刺身、塩焼き、煮付けくらいでしょうか。最近では都会から来た人に魚料理を教えてもらったりします。
一応、昔から伝わる漁師料理みたいなものはありますが、皆さんが想像する豪快な料理ではなく、冷蔵庫がなかった時代の保存の工夫やシケに備えるための調理法(加工法)でした。
昨今、子どもたちの魚離れが叫ばれています。私の所属する長崎県漁業士会では魚食普及のため、小中学校を対象に水産教室を開催しています。子どもたちと一緒に魚を捌(さば)いたり食べたりしていますが、果たして子どもたちは魚が嫌いになって「魚離れ」なんでしょうか?
調理のときは生臭い魚を何の抵抗もなく触ります。内臓もそれぞれの臓器を触って感触を確かめます。また、試食のため用意した魚料理は先を争って食べています。小骨なんかまったく気にしていません。
魚はそのままの姿で買うとけっして高いものではないのですが、キレイに盛り付けてあるパックの刺身はけっこうなお値段で売られています。ニーズに応えた販売方法なのでしょうが、これが魚を、ふだんのおかずから特別な日の一品にしている原因ではないでしょうか?
魚って、本来、漁師にとってもそうでない人にとっても普通の食材なんです。
それに、魚は手を(包丁)入れれば入れるほど空気に触れる面積が多くなるので、鮮度落ちが早くなります。私も刺身の柵を冷蔵庫で保存するときは最後の砦の皮はつけたままにしておきます。
世のお母さん方、魚を姿で買って捌いてみてはいかがですか(魚屋でうろこと内臓を取ってもらうと台所はそれほど汚れません)。
な?に、失敗しても刺身から“たたき”に変更すればいいんですから…。
私出身地は長崎県平戸市です。
魚で一番うまいのは「雑魚」だと思っています。
毎年帰省しますが、雑魚料理を食べに行くのが目的のひとつです。あと岩場で取れる巻貝(平戸の方言ではミナと言います)を塩ゆでして食べるのが楽しみです。アラカブ(かさご)やクサビ(ベラ)の背切りは、平戸の実家でしか食べれません。
(2011.02.23)
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