冬場、寒いのは着込めばいいのと、漁のときは体を動かすので平気ですが、暑い日、一日中海上で作業をするとその夜は体が温暖化して水風呂でクールダウンしてさらに扇風機を独り占めして家族の非難を浴びながら…でないと眠ることが出来ません。これからの地球温暖化のことを考えると眠れない夜が増えるのが恐怖です…。
さて、私の家の電力消費も大事ですが、もっと大事なことです。
毎日、海で仕事をして思うこと、それは地球温暖化は海の中の生態系に一番早く影響しているのではないか?と感じること。最近の海水温の上昇はここ10年で1℃と観測史上最高だと聞きます。陸上での温度差は朝晩のことを考えると1℃はたいしたことありませんが、海中ではとても大きく影響します。
高校の時、水産生物の先生が「魚類は0.1℃の水温の変化を敏感に感じて移動する」 と言っていたのを最近よく思い出します。明らかに網に入ってくる魚に変化があるのです。イワシ類、ヤリイカなど、以前は獲れていたのに獲れなくなった魚もいれば、初めて見る魚、特に南方系の魚がよく網に入ってきます。たまに、マンタ、ジンベイザメなどが入りビックリすることがあります。
もうひとつ重要なことは「海のゆりかご」、海藻の減少です。以前、ハワイからのお客さんをもてなした時、「ハワイの人って何が好き?」って話になり、ハワイ出身の祖母をもつ男が「ハワイには海藻がないからきっと海藻サラダ好きだよ」。…なるほど、南の海にあるのは珊瑚礁だけというイメージがあります(実際、南の海にはモズク、ウミブドウなどありますが)。なんだか漁師じゃないようなコメントですが中間の長崎人はこんなイメージです。
海藻が無くなる(磯焼け)原因の一つに草食魚類の食害があげられます。今より水温が低かった時(ほんの十年くらい前)、冬場に芽を出した海藻は草食魚類が活動できない低水温でグングン成長して大きくなって食害に対応していました。しかし、「地球温暖化」の影響でしょうか。冬場の海藻成長期にはすでに草食魚類が活動を始め、片っ端から海藻の芽を食べてしまってます。
海藻が海の中から消えはじめ、行政も動き始めました。草食魚類の加工品開発で消費を促し漁獲を上げる計画です。もともと草食魚類の「イスズミ」、「アイゴ」はクセが強くそのクセは時間とともに強くなるので地元でしか消費されませんでした。でも、イスズミの湯引き、アイゴのヒドリ(野母崎風タタキ)などでおいしく、「このクセがたまらん!!」と、熱狂的なファンがいるくらいです。さらに地元のかまぼこ屋が大量に仕入れるのでわざわざ公金を使って加工品開発しなくても草食魚類はちゃんと流通します。別のとこに税金使えばいいのに…。
いろんな海の中の生物の産卵場、稚魚の育成場、さらに光合成による酸素の供給など、藻場はたいへん重要な役割を持っています。
漁協青年部、漁業士会の取り組みで海藻種付けなど藻場の回復を手がけていますが、人の手によって壊れた自然は同じ人の手でもなかなか回復してくれません。地球規模の変化の中で一部の海域だけの取り組みの効果はわずかです。
でも、私達海で働く漁師は黙ってはいられません。これからも自分達で出来ることをやっていきます。
みなさん、10年前に行った海水浴の海にもう一度出かけ、その時の記憶を思い出しながら今の海と比べてください。きっと「地球温暖化」が実感できると思います。そして、何ができるか一緒に考えましょう。
地球をクールダウンする水風呂はないのですから…。
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