会社や工場の周りの清掃活動や、休日を利用した森林ボランティアなど、企業人が環境ボランティア活動に参加することが一般的になってきました。受け入れる地域・NPOも、参加しやすいプログラムを工夫し、受け入れ態勢を整えているところが増えています。
一方で、仕事のスキルを積極的に生かすボランティア活動“プロボノ”が、注目されてきています。“プロボノ”とは、ラテン語でPro Bono Publico(公共善のために)を略した言葉で、弁護士や会計士、コンサルタント、デザイナーや編集者などが、「月に数時間」などの時間を決めて、NPOの経営の相談や広報支援などを無償で行うことです。欧米ではプロボノ人材紹介のNPOが活躍するなど、浸透しているそうです。日本の環境NPOでも、多くの団体が、ホームページ制作、会計、法務、営業など、スキルを生かしたボランティアを求めていることがわかっています(2009年11月 ボランティアを募集する環境NPO35団体のアンケート結果より GEIC/EPC)。
2009年12月5日、東京・原宿で開催された「プロボノフォーラム Hello, PRO BONO - 2010年は“プロボノ”元年」に協力・出展してきました。会場には、20代?30代の社会人を中心に、300人を超す来場者が集まり、日本ではまだなじみのない「プロボノ」への関心の高さを感じました。
当日は、仕事の経験を生かし、NPOのホームページ・パンフレットの制作、ロゴやブランディングの開発、データベースの構築、人事のコンサルティングなど、幅広く活躍しているプロボノの事例を聞くことができました。環境分野やフィールドでの活動にはプロフェッショナルでも、組織基盤づくりや市場開拓などには不慣れなNPOにとって、強力なパートナーとして存在感をもつボランティアといえます。
プロボノをする個人にとっては、山や海で慣れない作業をするのではなく、普段の仕事の経験がそのまま役に立って喜ばれ、NPOを通して、環境や社会に貢献することができる、という達成感を得ることができます。
それだけではなく、未知の分野で、違う仲間と仕事のスキルを自由に試してみることは、新しい人脈を広げて本業に役立てることもありますし、日ごろの仕事の進め方について、問い直すきっかけにもなるということです。
また、企業にいると、個人の関わり方は部分的なものになりがちですが、NPOのプロジェクトに総合的に関わることで、スキルアップできる可能性もありますし、働き方やライフスタイルを考え直す人もいるそうです。
筆者の団体でも、銀行マンが経理や融資の経験を生かして活躍していますし、企業の経営感覚からのマネジメント・アドバイスをもらうなど、人材交流の効果を実感しています。私生活では、地域のコミュニティ・ファームのボランティア活動をしており、役所と住民の橋渡し、イベントや広報・記録などを一手に引き受けています。農業の知識はありませんが、仕事上のネットワーク、異なるセクターや人をつなげている経験を生かして、活動を立体的に広げ、サークル的な活動が社会化していくことに少なからず役立っている実感があり、さらにその経験が仕事にも役立つという、プロボノ的な手ごたえを感じています。
「ボランティアの数がいくら増えても、日本の山の手入れを全部することは不可能だ」と、悲観的なボランティア論を述べる人もいますが、それぞれの人が持っているスキルや時間を少しずつ集めていくことで、ダイナミックに環境や社会を変えていく力になるかもしれないと感じたフォーラムでした。
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