シドニーの北部に、普通ゴミでは捨てられない粗大ゴミを処分するゴミ処理場があります。環境とゴミ問題を適切に扱うことを目的としたセンターとして、近隣のカウンシル(地方自治体)が共同で運営を開始し、現在はカウンシルの支援の下で、民間企業に管理委託されています。
このセンターは、ただ単に粗大ゴミを捨てに行く場所としてだけではなく、ゴミ問題を住民ひとりひとりがきちんと理解し、適切な処理ができるように、様々な取り組みが行われています。そのひとつが、生ゴミを自宅で処理できるコンポストの講習会です。
コンポストの講習会は、ゴミ処理場内に造られた「エコ・ハウス&ガーデン」と呼ばれるセミナー棟で行っています。
私が受講した時は、コンポスト初級編と上級編に分かれており、どちらも約半日弱程度の講習会でした。同じ日に初級編と上級編が開催されるわけではないので、どちらか一方だけを受講することも可能です。初級編を受けなければ、上級編を受講できないということもありません。自宅で既にコンポストを始めている人は、いきなり上級編を受講することもできます。
講座開催のお知らせは、カウンシルのニュースレターやコミュニティ紙で告知されていますので、受講希望者は、希望日を選び、申込みをするだけでOK。受講料は無料です。
私が最初に参加した初級編の受講者は、若い学生から年配のご夫婦まで、年齢層も様々で、環境問題について関心の高い人たちばかりでした。以前にもこのコンポスト初級編を受講し、今日で3回目という常連さんもいました。
講習会は、講義と実践の二部に分かれており、前半はセミナー棟内で、人間が出すゴミが環境にどのような影響を与えているのか?について学びました。
生ゴミは、そのまま投棄すると、様々な酸をはじめとする有害物質が染みだし、地中に浸透して土壌や地下水を汚染します。そのまま地下水脈に入ってしまうと、川や海へも流れ込み、田畑に流れ込めば、農作物への影響も懸念されます。また、焼却するにしても、水分を含んだ生ゴミは、燃えにくいため、焼却に時間がかかり、コストもかさみます。焼却に時間がかかることで、発生する煙も増加し、大気を汚染します。どちらにしても、環境に悪影響を与えるのは明らか。
そうした環境問題について、農場経営家庭で育ち、ゴミがもたらす様々な悪影響に直面してきた経験から、現在のような職業を選んだという講師が熱く語り、受講者たちは皆、真剣に聞き入っていました。
そして、後半は、セミナー棟に併設されたガーデンに出て、実際のコンポスト容器を使ってやり方を学ぶ時間です。受講者が、講師の指示の下で、引き抜いた雑草や食べ物の生ゴミなどを入れていき、乾燥を避けるための水をかけたりしながら、ほどよい分量やかき混ぜ具合を体感しながら覚えていきました。
入れていいもの、いけないもの、どの程度入れてもよいのかなど、受講者から様々な質問が飛び交い、講師の回答を交えてのディスカッションも有益な情報源のひとつとなりました。
講習会の最後では、身の回りの自然に思いを馳せる瞑想の時間が数分間設けられ、受講者から、このような講習会を無料で開催してくれることへの絶賛と感謝の声が講師へ向けられて、終了となりました。
私自身も講習会に参加したことで、ゴミについての理解が深まり、自己流でやるよりは、一度こうした講義を聴いて、しっかり学ぶことも大切なことだと実感したのはもちろん、「こんなに手軽にできるなら、もっと早くやればよかった!」と、自宅に帰って早速コンポストを始めるきっかけとなりました。
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