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「生活密着型のカーボンオフセットを!」バックナンバー

0042010.09.28UPカーボンオフセットは机上の空論じゃない!-CO2削減が実行される仕組みと理由-

お金でけりをつける!?

省エネR&Dのグラフ

 前回の記事で、カーボンオフセットのためのクレジットを生み出す仕組みやその種類について触れました。今回は、カーボンオフセットの取り組みが、実際にCO2の削減につながっているのか?という疑問について説明したいと思います。
 時々、「カーボンオフセットはCO2の排出抑制努力をしない替わりにお金でけりをつける行為」という表現がされることもあります。
 しかし一方で、「CO2削減は乾いた雑巾を絞る」といわれるように、もはや削減する余地のないところまで削減しきった上でとる手段でもあります。特に日本の省エネの取り組みや技術開発は各国と較べてもギリギリのところまで進んでいます。

 連載第1回で、地球温暖化防止のためのカーボンオフセットの第一段階として、「自らの排出量を知る事」と「削減努力」が必要である、ということをお話ししましたが、この「自らの排出量を知る事」と「削減努力」をギリギリの所までした後に、減らしきれない部分をカーボンオフセットするのが本来のあり方です。
 企業が努力し、それでも排出してしまうCO2を責任を持って減らしていくには、カーボンオフセットという仕組みをも活用しなくては、とてもじゃないけど間に合わない、という状況になったわけです。
 そうした排出削減の努力をしないで、最初からカーボンオフセットするということになると、いわば「CO2を出してはいるけど、お金を出せばいいんでしょ」というわけで、上に書いた通り、まさしく「お金で解決する」という話になります。これは、避けなくてはいけません。

社内や工場内などで削減し切れないCO2のその後


図2 西岡先生のバスタブの絵

 京都クレジットのCDMや、経産省の国内クレジット制度は、排出量が増えるスピードを低下させた分を算定し、クレジットとして発行します。
 図2では、蛇口からドバドバ出ている水をCO2の排出に例えており、今は勢いよく出ている蛇口を少し閉め、出てくる水を減らす(=CO2排出量の削減)ことで、その効果を算定して取引に使うというやり方です。
 一方、京都クレジットの新規植林/再植林CDMや、J-VERの森林吸収型プロジェクトは、森林にCO2を吸収してもらい、CO2吸収量を増加させます。
 図2では、すでに溜まってしまったお風呂の水(=大気や海洋中のCO2)を抜く栓を大きくし、溜まった水が減っていく量を増やす(=CO2吸収量の増加)ことで、その効果を算定して取引に使おうというものです。

 どちらのパターンでも、会社や工場の中などどうしてもCO2を出してしまう場所での排出がこれ以上削減できない場合でも、カーボンオフセットをすることによって、工場の裏山や途上国の森など、どこか別の場所で、排出削減や吸収増加が行われるわけです。
 地球という、ひとつの閉じた系の中で見れば、カーボンオフセットすることによって、CO2の排出量が減っている、もしくはCO2の吸収量が増えているわけで、結果として大気中のCO2濃度を下げる方向に作用します。

実際にCO2の削減が認定されるまで

 環境省J-VER制度の枠組で筆者の会社が取り組む森林吸収型クレジットのお話をします。私たちは国内の森林30ヘクタールの間伐整備をすることによって、5年間で1000トンのCO2吸収量の増加を見込んでいます。
 この数字は、環境省の指定した独立公正な認証団体によって細かくチェック(認証団体は、書類を見るだけでなく、実際に間伐整備した森にも長靴でやってきます)されて、「確かに1000トン、吸収する量が増えるようになります」という認証をいただいて──いわば、間接的に環境省のお墨付きを得て──、CO2の削減に取り組んでいる企業に安心して購入してもらえるようになります。
 実際に間伐整備が行われた森林と行われていない森林は、一見しただけで違いが歴然です。間伐整備が行われ、日差しが入り健康に育った森林は、いきいきとした綺麗な緑が茂り、CO2をぐんぐんと吸い込むようになります。
 CO2は目に見えませんが、健康で緑豊かな森林の中にいると、私たちの生命を支えてくれている事を実感できます。

間伐前
間伐前

間伐後
間伐後

 次回は「地球規模で考えなくてはいけないCO2への取り組み」ということについてお話ししたいと思います。

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