前回紹介した、「カーボンオフセット付き商品」や「イベント開催のカーボンオフセット」が、どんな仕組みでCO2排出を相殺しているのか、気になりませんか。
あなたがオフセットしたいカーボン(CO2)の量を「排出権」と言います。「排出枠」や「クレジット」とも言われ、カーボンオフセットを購入する側の排出量と、提供する側の削減・吸収量の価値が見合ったものとして取り引きをするための単位となります。「排出権」というと、あたかも「排出してよい権利」のようだったり、「金融商品」のようにも響くため、「排出枠」という言葉が使われたりもします。
カーボンオフセットの仕方には、植林などによって吸収量を増やしたり固定化技術によって生み出したりする“直接的な固定”だけでなく、途上国などのCO2の排出源における改善・改良事業の実施で減らした量をカウントする“間接的な方法”もあります。
こうした間接的なCO2削減プロジェクトとして、まずは京都議定書に定められているプロジェクトがあげられます。例えば、CDM(クリーン開発メカニズム Clean Development Mechanism)・JI(共同実施 Joint Implementation)・ET(排出権取引Emission Trading)、などです。
CDMというのは、先進国が途上国の設備等に対して技術支援などを行うことで減らした分の排出量を「排出権」として取引すること。支援をした先進国の削減量として計上できる仕組みになっています。森林整備によるCO2吸収量増大もCDMに含まれています。こうした、CDMによって創出された排出権を「CER(Certified Emission Reduction)」と呼んでいます。
JIは、先進国同士が共同して温室効果ガス排出削減・吸収のプロジェクトを実施して排出権を得る仕組みです。JIから創出された排出権を「ERU(Emission Reduction Unit)」といいます。
こうして減らした分のCO2量がカーボンオフセットのクレジットに充てられるというわけです。
問題視されている取り引きもあります。「ホットエアー」と呼ばれるもので、京都議定書で決められた排出量目標をすでに下回っている一部の国々(旧ソ連や東欧諸国)が持つ、達成余剰分のことです。この余剰分を、自国の削減努力等だけでは目標達成ができずに困っている別の国に売るわけです。
これは一種のET(排出権取引)なんですが、CDMやJIが地球全体でCO2排出量の増加速度を減らす取り組みであるのに対して、ホットエアーの売買は「ウチの国は予定よりCO2が出なかったから、だれかこの枠を買ってくれないかな?」ということですから、CO2の削減効果は得られません。つまり、CO2削減のための政治的取り決めが金儲けのために使われ、結果、CO2排出量の増加速度は維持されてしまうわけです。
ホットエアーの取り引きを有効にするための仕組みとして、「グリーン投資スキーム(GIS, Green Investment Scheme)」という考えも派生しました。これは、ホットエアーの取り引きによって得たお金を「CO2削減効果のあることに限定して使う」という協定を交わした上で、ETの契約をすること。日本政府も2009年春に、チェコやウクライナとGISの協定を交わしました。
ちょっと話が脱線しましたね。
カーボンオフセットのためのCO2削減プロジェクトは、京都議定書に定められたものだけではありません。民間ベースで行われているCO2削減プロジェクトを第三者機関が「確かに何トン削減しています」と認証(Verification)して、京都メカニズムの枠組とは別に自主的な動きとして取り引きするものです。こうして創出されるクレジットを、「VER(Verified Emission Reduction)」と呼びます。
日本で行われているVERのプロジェクトに、J-VER制度というものがあります。これは、石油や石炭などの化石燃料に替えて、薪などの木材や使用済み天ぷら油の改質燃料を使ったり、森林の間伐を促進することでCO2吸収量を増加させたりするプロジェクトに対して、第三者機関が認証し、環境省が発行する排出権です。
ウチの会社も現在J-VERに取り組んでいますが、審査は非常に厳格、もうぐったりです。
次回は、カーボンオフセットによる“削減”が、「実際にCO2の削減につながっているのか?」ということについて紹介したいと思います。
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