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「生活密着型のカーボンオフセットを!」バックナンバー

0052011.01.25UP地球のことを想像してみる

地球が2個必要

CO2の排出量、吸収量と大気中濃度の関係(環境省中央環境審議会資料より抜粋)
CO2の排出量、吸収量と大気中濃度の関係(環境省中央環境審議会資料より抜粋)

今後のCO2排出量の予測(環境省中央環境審議会資料より抜粋)
今後のCO2排出量の予測(環境省中央環境審議会資料より抜粋)

 連載第4回では、カーボンオフセットが実際CO2削減につながっているのか?ということをお話しました。
 今回は少し離れて「地球温暖化」という大きなテーマから、私たちのくらしとCO2のつながりについてお話をさせていただきます。

 カーボンオフセットと切り離しては考えられない「地球温暖化」は、文字通り地球規模の問題です。これまでの天候観測で、地球がだんだんと温暖化していることが明らかになっています。諸説ありますが、国際社会では、人為起源のCO2がほぼ原因であると結論づけています。
 人間の生活を便利にするために排出される地球全体のCO2の量は、自然界が吸収できる能力の2倍にまで増えていると言われます。つまり、世界中の人々が今の生活を続けるには、地球が2個必要だということになります。

 しかも世界の人口はまだまだ増加の見通し。経済成長とともに、これまで電気や工業製品をあまり使わないシンプルな生活をしていた途上国の人たちが、より便利な生活を求めるようになると、さらに“もっと多くの地球”が必要となってしまいます。

シンプルに生きてきた人たちの次の一歩

 以下のような順番で皆さん自身の行動を考えてもらったらいいんじゃないかと、私は思います。  まずは地球全体のこと、次に日本や自分の地域のこと、最後に家族や自分のこと。  地球上のひとり一人が自分勝手に暮らしていては、地球規模の問題は解決できません。地球全体のことに思いを巡らせて生活を考え直す時期にきているのだと思うのです。
 今日の日本は、全世界の2%弱の人口で4.2%のCO2を排出しています。でも数十年ほども遡れば、日本人の多くは、生態系の一部としてシンプルに生きてきました。シンプルに生きてきた私たちが経済成長を遂げた次の選択を世界に見せていく。誰かの後追いではなく、日本だからこそ示せる姿があるのではないでしょうか。
 今までの便利な生活は、自然界の恩恵を無尽蔵に使い尽くしてきたからとも言えます。これからは、自然の恩恵と犠牲の上に成り立っていることを自覚し、頭の中のどこかで地球を思いやることで、ちょうどバランスが取れるくらいな気がします。

ポスト京都議定書問題と各国の思惑

 2010年11月末から12月始めにかけて、メキシコのカンクンで、国連の気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が開催されました。石油など化石燃料をたくさん使って経済成長をした先進諸国、これからそれを利用して成長しようとしている発展途上国、ツバルなどの海に沈みそうな島嶼(とうしょ)諸国などが参加して、地球温暖化の防止に向けてどういったルールを作っていくかを議論しました。
 さまざまな立場の国が自己主張をするので、話はそう簡単にまとまりません。論点のひとつには、世界の温室効果ガス排出量の4割に当たる米国・中国が参加しないままの京都議定書を延長して活動を続けるのか、米国・中国を含めた全ての主要国が参加した新たなルールづくりをめざすのか…。会議では、どちらの可能性も残した合意が採択されましたが、京都議定書で定めた削減目標の区切りとなる2012年は間近に迫っています。その後の枠組をどうするか、いずれかの選択を迫られているわけです。

 各国が自国の利益ばかりを追求していたら、CO2削減をがんばった国だけが重大な国益の損失を招きかねません【1】。この話になると、環境問題から国際政治や外交の問題になってしまいますが、自分の国のことと同様(またはそれ以上に)、地球全体のことを考えていかないと、こうした地球規模の問題は解決できないわけです。

 次回は最終回です。これまでのコラムの中で触れたことを、皆さんの生活の中でどう活かしていくか、まとめたいと思います。

【1】
 ある製品の製造や流通等のプロセスで排出するCO2を削減するには、手間もコストもかかります。排出削減の努力を一切せずに製造・流通できれば、その分だけ安い値段で販売することができ、競争力があがります。
 結果として削減努力をした国が貿易で伸び悩むことになるのは、重大な国益の損失になります。

 一方、こうした議論に対して、歴史的な排出量の問題も国益と密接な関係があります。先進諸国は、400年前から石炭・石油を燃やすことで経済成長を実現しました。それも削減努力をせずに。そのツケが現在の地球温暖化などの形で影響を及ぼしているわけですが、今になって途上国が同じような経済発展を遂げようとするのに対して制限をかけるのは、途上国の国益を損なうことになるという議論です。
 途上国が先進国に対して、技術協力や経済支援を求めるのは、こうした理由があってのことです。

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