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「DXで変わる、啓発活動のあり方」バックナンバー

0022021.11.30UP「全国中小企業クラウド実践大賞」にみる、オンラインコンテストの可能性と課題

 日本デジタルトランスフォーメーション推進協会が構成メンバーに参画しているクラウド実践大賞実行委員会は、総務省共催で、「全国中小企業クラウド実践大賞(以下、クラウド実践大賞)」の地方大会を10月に実施いたしました。

 クラウド実践大賞は、中小企業等のクラウド活用の実践事例をコンテスト形式で共有することで、地域の中小企業等のクラウドサービス活用の取り組みを加速化することを目的として、2019年から開催しています。
 2019年は、全国5か所での地方大会、全国大会ともにオフラインで開催し、このうち全国大会は東京会場に300名が集まって実施しました。2020年は、2019年と同じく全国5カ所で地方大会を実施しましたが、コロナ禍でもあり、移動が制限されている登壇企業を考慮して、オンラインとオフラインのハイブリット形式で実施しました。同年の全国大会は、実行委員会で協議を重ねた結果、フルオンラインで開催しました。そして本年は、10月の地方大会、全国大会、全てをフルオンラインで実施中です(全国大会は12月に実施予定)。
 このオフライン、ハイブリッド、フルオンラインのコンテスト実施から、筆者が感じたオンラインコンテストの可能性と課題についてお伝えしたいと思います。

プレゼンテーションが多様に

DXCONCEPT「4つのS」

DXCONCEPT「4つのS」

 オフラインで開催した場合、登壇企業のプレゼンテーションは、パワーポイントなどのスライドを使ったものがほとんどでした。スライドの作り方やプレゼンテーション手法に工夫をこらしている企業もいますが、大きな差は感じられませんでした。また、ライブでプレゼンテーションをするため、機材トラブルの影響や、プレゼンテーションの持ち時間を守れず時間が長引くなど、運営面でうまくいかないこともありました。

 今年はオンラインで開催したため、登壇企業のプレゼンテーションは事前に収録した動画を配信し、審査員との質疑応答時はZoomを使って実施しています。結果として、何度も撮り直しができるためか、登壇企業のプレゼンテーションの質は明らかに向上し、自社事例の表現方法も実に様々な工夫がこらされていました。


北陸総合通信局長賞を獲得した、株式会社能登島マリンリゾート社の発表

北陸総合通信局長賞を獲得した、株式会社能登島マリンリゾート社の発表

 私や主催者が一番驚いたのは北陸総合通信局長賞を獲得した、能登島マリンリゾート社の発表です。

 能登島の美しい海をバックに、スライドを使わず自社の事例を発表、スライドで示す図解やテキストがなくとも、自社の課題をどのように解決したのか大変わかりやすいストーリーで、審査員も興味を惹かれ、質疑応答も非常に活発でした。
 何を視覚的に訴えると共感や興味につながるのか、図解やテキスト以外にもわかりやすい表現があることなど、「伝えること」「伝え方」を柔軟にとらえ、考えて実践してくださったプレゼンテーションから大きな学びがありました。
 機材や場所の制約がないからこそ、自由な発想で自社の強みを最大限に伝えるプレゼンテーションができるというのは、オンラインイベントの大きな可能性です。

臨場感と飽きさせない演出が課題

北海道総合通信局長を受賞した相互電業株式会社管理部の今野愛菜氏(右)と、総務省北海道総合通信局長の豊嶋基暢氏(左)

北海道総合通信局長を受賞した相互電業株式会社管理部の今野愛菜氏(右)と、総務省北海道総合通信局長の豊嶋基暢氏(左)

 登壇企業によるプレゼンテーションのパートはオンラインの特性を生かして企画することができましたが、「結果発表」に課題を感じました。オフライン開催でリアルに会場に観覧者がいれば、拍手や歓声が自然とおこり、会場全体に盛り上がりを作ることは、それほど難しくはありません。結果発表直前の独特の緊張感や、結果発表の瞬間の受賞企業の喜び、選ばれなかった企業の悔しさも、会場全体の空気として共有できます。

 オンラインでの「結果発表」は、BGMを挿入する、映像での演出、発表前の間を長めにとるなど、テレビのコンテスト番組の演出を参考に、工夫をしました。しかし、書き込まれたコメントなどからうかがえる視聴者の反応は、オフライン開催・リアル会場と比較すると明らかに共感が薄く、手応えを感じられない大会もありました。オフライン開催・リアル会場であれば、イベントを通して伝えたいメッセージを込める大きな山場だと考えているだけに、「オンラインの壁」を感じつつも、思考を柔軟に、固定概念を取り払って、視聴者が求める臨場感や共感を再定義し、オンラインだからこそ伝わる演出ややり方にチャレンジし続けます。

 二つ目の課題は、視聴者が飽きない工夫です。オフラインで開催したことがあるイベントを、オンラインで開催する場合、オフラインのコンテンツをそのまま、順番もやり方もあまり見直すことなく、もしかすると、オフラインコンテンツをできるだけ忠実にオンラインで再現しようと考えて配信するケースも少なくありません。ところが、主催者として「必要」と考えたオフラインの慣例的なコンテンツが、オンラインでは視聴者の離脱率が高いことがあります。オフライン、オンラインに関わりなく、参加者・視聴者にとっては、もともと興味関心が薄いコンテンツなのかもしれませんし、オンラインに限り、もう一工夫が必要なのかもしれません。また、イベント全体の時間が長すぎるのか、イベントの途中から視聴者数がガクンと落ちるようなことにも遭遇します。オフラインで会場に着席していれば、離席できない(離席しづらい)ため、この場合も、コンテンツそのものか、オンラインに限ってか、原因の見極めも必要ですが、いずれにしろ、視聴者の視点に立った改善が必要です。

 オフライン開催において慣例でやっていたコンテンツの見直し、イベント全体にメリハリをつけるための各コンテンツの尺の見直し、事例や結果発表のやり方を変えるなど、視聴者に楽しく参加していただく、これまでのやり方にとらわれない工夫、今後ますます求められるでしょう。

 来たる12月10日、いよいよ、クラウド実践大賞の全国大会を開催します。視聴者の皆様に「オンラインでここまでできるのか!」という驚きと可能性を感じていただけるイベントにすべく、準備を進めています。皆様、ぜひご視聴ください。


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