防除を実施する場合は、対象の外来種の定着状況(未定着、定着初期、分布拡大期、まん延期)によって取るべき戦略が大きく異なってくることは、前回の006「防除における計画の重要性」でご紹介したとおりです。被害を及ぼしている外来種がいる、被害を及ぼしそうな外来種が発見された、ということがあった場合は、その外来種がどの定着段階にあるのかを確認することが大切です。
今回は、“定着初期”に焦点を当てます。定着初期段階では、なんと言っても、「早期発見・早期防除」(外来種被害防止行動計画 第1部 第2章 第1節 4(p.54-p.62)を参照)がとても重要です。
それでは、具体的な例を挙げて、“定着初期段階での対策の必要性”を紹介します。
2014(平成26)年6月に特定外来生物に指定された水生植物のオオバナミズキンバイは、琵琶湖では南湖の赤野井湾で2009(平成21)年に初確認された後、年々生育範囲を拡大させ、今では南湖一円の沿岸域に拡がりました。沿岸域を覆い尽くすように拡がることで固有魚類等の生息・繁殖地であるヨシ原を減少させるなどの生態系被害に加えて、船舶の航行や漁業活動にも支障をきたしています。
その生育面積は、発見当初にはわずか142m2であったものが毎年拡大を続け、4年後の2013(平成25)年には緊急雇用対策事業を利用して人力で約18,000m2を駆除したにも関わらず、年度末には当初の生育面積から約450倍の64,880m2にまで増加しました。
関係する各主体(行政、NPO法人、ボランティア団体など)が連携して対応するため、2013(平成25)年度末に「琵琶湖外来水生植物対策協議会」を設置し、取組を強力に進めています。
2014(平成26)年には、生育面積が約157,400m2とさらに拡大しながらも、建設機械や水草刈取り船を用いた駆除手法を導入するなど駆除の効率化が図られ、また関係者のボランティアによる駆除作業も積極的に行われ、年度末の生育面積が46,300m2と、初めて生育面積を減少に転じさせることに成功しました。
2015(平成27)年度に入り、2014(平成26)年度に駆除した場所でも再生が確認される場合があり、対策は依然として困難な状況が続いていますが、関係者が連携し防除が行われています。また、2015(平成27)年度は初めて琵琶湖の北湖周辺でも発見されましたが、北湖での定着を食い止めるために、早期対策を実施しています。本種はちぎれた茎や葉の断片からでも増殖するため、水の流れや風波により、まだ定着していない湖岸や琵琶湖とつながっている河川・内湖に拡がる可能性があります。
関係者は分布拡大防止のために湖岸や河川での巡回・監視を強化しており、それが功を奏し、北湖での早期発見・早期対策につながりました。
発見当初からの拡大・増殖傾向を振り返ると、オオバナミズキンバイの増殖率が高いことは明らかで、より早期に対策を講じていれば、さらに効果的であったのではないかと考えられています。
今、外来種による被害が生じていなくても、導入・侵入の過程が意図的であるか非意図的であるかを問わず、外来種問題は突如として発生することは少なくありません。琵琶湖のオオバナミズキンバイのように、早期の対策が望ましいことは費用対効果の面から見ても明らかです。
に警戒するなど、地域ごとに侵入するおそれのある外来種を整理し、早期発見するための監視体制を設けるなどの対策を講じることが必要です。
国レベルで、我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種をまとめた「生態系被害防止外来種リスト」では、我が国に未定着の外来種や部分的にしか生息・生育していない外来種もとりまとめています。それらについての監視体制を整えることが重要です。
※本稿は、「外来種被害防止行動計画」p.58をもとに改変しました。
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