私たちの周りでは多くの生き物が見られます。多くはもともと日本にいる生き物(在来種)ですが、場所によっては、外来種の方が多く見られる場所もあります。私たちは、それらが侵略的であることに気付かない場合も多く、知らぬ間に分布を拡げるお手伝いをしてはいないでしょうか。
侵略的外来種には、どのような種がいるのかを知り(生態系被害防止外来種リストやお住まいの都道府県が出していれば都道府県版の外来種リスト)、外来種被害予防三原則「入れない」、「捨てない」、「拡げない」をしっかり守りましょう(侵略的外来種については、001「Q&A:外来種問題の考え方」をご参照ください)。
子どもの頃、アメリカザリガニを一度は手に取ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。現在、それほどまでに日本全体に拡がっており、私たちにとって“最も身近な生き物”の一つと言えるような状況です。
しかし、その正体は、ウシガエル(特定外来生物)の餌用として昭和初期に日本に持ち込まれ、養殖池から逃げ出した個体が分布域を拡げて全国各地に定着した、外来種です。雑食性で、絶滅危惧種の水草や水生昆虫に対して非常に大きな影響を及ぼすことがわかっています。
例えば、静岡県桶ヶ谷沼(おけがやぬま)は、国内希少野生動植物種であるベッコウトンボの全国有数の生息地でしたが、増加したアメリカザリガニによって捕食されたりして生息数が減り、危機的な状況に追い込まれています。
その他の水生昆虫や水草にもアメリカザリガニの影響で同地から絶滅してしまったと考えられる種がいくつも報告されており、現在もアメリカザリガニの駆除活動が続けられています。
また、石川県金沢市の池では、数種の水草とともに国内希少野生動植物種であるシャープゲンゴロウモドキが姿を消してしまいました。2000年代後半にアメリカザリガニが侵入して、これらの在来種を捕食した結果、この池から絶滅したものと考えられています。
これらの他にもアメリカザリガニの侵入により、水生生物が消滅する事例が各地から報告されています。
近年、アメリカザリガニは、身近な小動物として、多くの人々に慣れ親しまれています。学校教育でも教材として取り扱われることが多く、飼育されていた個体が「かわいそうだから」といった理由で、野外に放たれる事例も少なくありません。
かつては北日本の山間地の水辺に広く分布していた日本の在来種であるニホンザリガニは、現在では北海道や青森県、岩手県、秋田県の一部に分布するのみです。アメリカザリガニが定着して長い月日が経っている地域の人たちの中には、アメリカザリガニを日本の固有種と誤解している事例もみられます。
日本各地にまん延しているアメリカザリガニですが、北海道の大部分、東北、北陸、中国、琉球列島の一部などには未侵入の場所がまだ残されています。これ以上分布を拡げて日本固有の生態系に悪影響を及ぼさないようにするため、野外に放つこと、捨てることは決して行わないようにすることが必要です。
※本稿は、「外来種被害防止行動計画」p.37をもとに改変しました。
外来種のことが詳しくかいてあってよかった
(2018.09.14)
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