外来種は、生物多様性を保全していく上で、非常に大きな問題と考えられています。日本では、生物多様性保全を進めるための国家戦略(生物多様性国家戦略2012-2020)で挙げられている生物多様性に対する4つの危機の一つに外来種問題が位置付けられています。
その一方で、外来種問題については、新たらしくかつ複雑な課題であることから、必ずしも適切に理解されているとは言い難い状況にあることも事実です。
第1回の今回は、外来種について、よくある質問や疑問とそれらに対する 科学的見解や理念をご紹介します。
【答1】 外来種とは、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって他の地域から持ち込まれた生物を指します。国外から持ち込まれたものだけではなく、例えば本州だけにいたものが北海道に持ち込まれる場合にも外来種となります。
私たちの身近にも外来種はたくさんいて、金魚飼育用の水草として知られているホテイアオイや、アメリカザリガニなども外来種です。
なお、渡り鳥や、海流などで運ばれる魚や植物の種などは、自然の力で移動する生物なので外来種には当たりません。
【答2】 外来種の中には、もともとその地域にいた生きもの(在来種)を食べたり、そのすみかを奪ったりするものがいます。また、農作物や漁業対象の魚を食べたり、畑を荒らしたりして、農林水産業に被害を及ぼすものもいます。なかには、毒をもっていて人の命を脅かしたり、噛みついて怪我をさせたりするものもいます。このような被害を及ぼす外来種を、「侵略的外来種」と言います。
しかし、「侵略的外来種」も、本来の生息・生育地では在来種として生活しています。‘侵略的’というと、何か恐ろしい・悪いものというイメージを持たれがちですが、たまたま持ち込まれた場所が、その外来種にとって住みやすい環境であったり、食べやすい生き物や農作物が豊富にあったりすることで大きな影響を引き起こしてしまっただけで、決してその生きもの自体が恐ろしいとか悪いというわけではありません。
日本ではごく普通に見られるクズ(植物)やマメコガネ(昆虫)も、元々の生息・生育場所(すみか)ではない北アメリカでは「侵略的外来種」と言われています。
【答3】 外来種による影響は、主に以下の3つが挙げられます。
[1]生態系への影響
生態系は、そこに共存する生物の種の間に長い期間をかけて作られた関係(例えば、食う・食われるといった関係)を通じて、微妙なバランスのもとで成立しています。そのため、その地域にもともといなかった生きもの(外来種)が入ってくると、生態系のバランスが崩れ、悪影響が生じる場合があります。
具体的には、外来種がもともといた生きもの(在来種)を食べて減らしてしまう原因になったり、在来種と同じ食物や生息・生育場所(すみか)を巡って競争したり奪ったりなどの問題を引き起こしています。
京都市にある深泥池(みぞろがいけ)では、1972年に8.3%だった外来魚率(生息する魚類の種数に対する外来種の率)が2000年には60%に達し、生息する在来魚の種数は15種から7種に減少してしまいました。
[2]人の生命・身体への影響
毒を持っている外来種が入ってくると、咬まれたり、刺されたりして人の生命や身体に危険が生じるおそれがあります。
石垣島などから沖縄島に持ち込まれた毒ヘビであるサキシマハブは、現在、ハブより高密度で生息している地域もあり、このような地域では高い割合で人が咬まれる被害が生じています。
[3]農林水産業への影響
外来種の中には、畑を荒らしたり、漁業の対象となる生物を食べたり、危害を加えたりして、農林水産業に被害を及ぼすものもいます。
例えばアライグマは2013年度に全国で年間3億4千万円もの農作物被害を出しています。
【答4】 世界各地には地域特有の生きものが生息・生育しています。こうした固有の生きものは、海、川、山などによって自由に行き来できないことで、生活の仕方や形などに違いが生じ、地域ごとの姿に進化してきたものです。
外来種が持ち込まれると、もともといた生きもの(在来種)が絶滅したり、どの地域でも同じ生きものだけになったりと、それぞれの地域固有の生物多様性(生きものたちの豊かな個性とつながり)が失われてしまいます。また、地域にいる生物は、文化の源でもあり、これらも失われてしまう可能性もあります。
生きものは、単純に種類が多ければ良いというわけではありません。もともとその地域にいなかった生物(外来種)を増やすことは、良いことではないのです。
※本稿は、「外来種被害防止行動計画」p.32をもとに改変しました。
大変勉強になりました。卒業論文を書く際に参考にさせていただきます。
(2019.10.16)
勉強になりました
(2019.02.19)
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.