外来種というと海外から入ってきた生物をイメージすることが多いと思います。しかし、日本にもともといた生物(在来種)であっても、人の関わりによって生物が移動することで外来種問題は生じてしまいます。
日本に生息している生物は、必ずしも日本全国に生息しているとは限りません。日本は南北に長かったり、平地から山岳地まで標高差があったり、多くの島々があったりするため、日本国内でも多様な生態系が構築されています。例えば、本州に生息しているニホンイタチは、伊豆諸島や琉球列島などの島々には生息していません。そのほかにも、沖縄だけに生息するトカゲや樹木、平野にだけに生えていて、山岳地には生えていない植物などがあります。
このように日本の一部で見られる動植物が人の手で他の地域に運ばれ、移動した先の地域で新たに定着し、問題を引き起こすことがあります。これを「国内由来の外来種問題」といいます。
「生態系被害防止外来種リスト」には、これら日本で生態系への被害を及ぼすおそれのある国内由来の外来種についても掲載されています。
日本固有種のニホンイタチは、全国に広く分布しますが、本来は本州、四国、九州と佐渡、隠岐、伊豆大島、淡路島、小豆島、五島列島、屋久島、種子島等の比較的大きな島に分布が限られていました。現在は、北海道や利尻、礼文、奥尻、焼尻等の北海道沿岸の島、伊豆諸島の三宅島、八丈島、青ヶ島、琉球列島の一部の島嶼にも分布していますが、これらの場所にはもともと生息していなかったため、国内由来の外来種として問題を引き起こしています。北海道には明治初期に非意図的に導入されたと考えられていますが、その他の地域ではネズミの天敵として、もしくは毛皮利用の目的で意図的に導入されました。
ニホンイタチは、小さな島では強力な捕食者として生態系に影響を及ぼす事例が明らかにされています。
琉球列島の与論島ではヘリグロヒメトカゲ、クロイワトカゲモドキ(固有亜種ヨロントカゲモドキ)、キノボリトカゲ等の爬虫類の絶滅を引き起こし、オキナワアオガエルの絶滅もニホンイタチの捕食が原因のひとつと考えられています。
また、伊豆諸島三宅島等でもオカダトカゲやアカコッコの減少の要因としてニホンイタチによる捕食が挙げられています。
さらに、三宅島ではオカダトカゲと競争関係にあったオオヒラタシデムシの増加という二次的影響も報告されており、島の生態系が変質してしまうといった事態が起きています。
高山帯の代表的な植物の一つであるコマクサは、高山植物の女王とも呼ばれ、北海道と中部地方以北の限られた山域に生育しています。その一方で園芸品種を含む市販品が、山草として鉢植えやロックガーデンに利用されています。
高山帯は、一般的には外来植物が比較的少ない環境ですが、最近ではこれまでコマクサが生育していなかった山域で、外部から持ち込まれたコマクサが生育範囲を広げるようになってきました。これらのコマクサのDNAを解析したところ、白山国立公園のコマクサは、乗鞍岳と市販品、日光白根山のコマクサは、草津白根山、蔵王山、市販品のコマクサが持ち込まれたものと推測されています。
こうしたコマクサは、我が国の在来種ではあるものの、本来の生育地ではない他の高山帯の原生的な自然を破壊する外来植物(国内由来の外来種)として、駆除の対象になっています。高山帯での駆除作業には人手がかかるばかりでなく、作業に伴う人の影響や、抜き取りによる土壌の流失も心配されます。
高山帯の多くは国立公園などの自然公園に指定され、一部の地域で植物の植栽や種子をまくことが規制されています。たとえ法律で規制されていなくても、他の地域からに生物を持ち込むことは、長い時間をかけて成立してきた地史的な背景を持つ自然を破壊することになってしまいます。
海外にいる外来種の安易な持ち込みは、日本の在来種や生態系に取り返しのつかない影響を与えてしまうことがあります。同様に、日本の在来種であっても、分布域外に導入された場合、国内由来の外来種として影響し得ることに注意が必要です。
例えば、本州のカブトムシを北海道や沖縄で放してしまったり、捕まえた魚を元の川とは違う川に放してしまったりすることなども問題を引き起こす可能性があります。
国内の生物についても、それぞれの地域で進化した長い生物の歴史があるため、外来種被害防止三原則(入れない、捨てない、拡げない)が大事なのです。
※本稿は、「外来種被害防止行動計画」p.64及びp.108をもとに改変しました。
北海道に住む小三の孫が理科の授業中に北海道にカマキリはあるか?と先生から聞かれて、ただ一人「いない」と答えたそうです。なぜ?と質問され「国内外来種だから」と答えた。その後先生が皆んなに説明してくださったと聞いて急いで調べました、私も初めて聞く言葉でしたから。
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