「世界中の「子育て家族」から最も愛される旅館へ」バックナンバー
伊勢志摩国立公園は、伊勢神宮やリアス海岸など、日本の美しい自然と伝統が融合した場所であり、その風光明媚な景観は多くの観光客を引き寄せています。私は、この素晴らしい地で、子育て家族向けに特に優しい体験を提供する旅館「扇芳閣」を経営しています。
今回は、伊勢志摩での三世代旅行をテーマに、その難しさや課題、求められる観光のスタイルについて探ってみたいと思います。
三世代旅行は、異なる世代が一堂に会し、共に楽しむ素晴らしい機会であると同時に、その組織や計画にはさまざまな難しさが伴うと言われています。例えば、異なる世代の興味や体力、食事の好みの違いが代表的な例です。 これらの課題を解決し、より充実した旅行体験を提供するためには、旅館やホテルのような旅行先の施設がさまざまな世代に対応できる「やわらかいあたま(柔軟性)」を持つことが求められます。
まず、異なる年齢層の興味の違いに対応するために、親子で楽しめる多様なアクティビティを用意することが重要です。例えば、子どもたちは自然に親しむための冒険的なトレッキングや生態系体験を求めるかもしれません。伊勢志摩では、昨今ではリアス海岸の美しさを感じながら「サップ(スタンドアップパドルボード)」と呼ばれるボードの上に立ってパドルを漕いで進む水上アクティビティが楽しめるサービスなども登場しています。
同時に、シニア世代がゆっくり楽しめる庭園散策や歴史的な見学ツアーも用意することで、家族全員が楽しめるバラエティ豊かなプログラムを提供できます。子どもが遊んでいる間の時間を家族がゆったりと過ごせるサービスが不可欠と言えます。
また、異なる体力を考慮した設備やアクティビティの提供も重要です。例えば、車椅子利用者や歩行が不自由な方に対応できるバリアフリーな設備やアクティビティを整備することで、シニア世代も安心して参加できます。一方、子どもたちがエネルギッシュに遊ぶための遊び場やアスレチックエリアも整備し、全世代が楽しむことができる環境を作り上げます。
扇芳閣では、2023年に森のアスレチックパークを開設し、近年外遊びの減少が叫ばれる中で、世代を超えて自然環境を楽しめる体験を提供しています。
食事の好みに関しても、さまざまなオプションを提供することが求められます。メニューには子ども向けのアレルギー対応料理やシニア向けの噛みごたえのある食事を含めて、食事時間も柔軟に調整できるようにします。特に、食事は家族が一堂に集まりコミュニケーションを深める大切な時間であるため、各世代の好みに応えることがより一層重要です。
そんな中で、見落とされがちなのが、食事に要する「時間」です。当館であった事例でも、ゆったりと食事をとりたい祖父母と、早く食べて遊びに行きたい孫世代とが、同じ食卓でゆったりと過ごすことが難しかったケースもあり、さまざまなニーズに対応できるお部屋食を提供したり、食べ終わった後の時間を有意義に過ごせる貸し出しのオモチャを用意したりと、個別の対応をしています。
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