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「世界中の「子育て家族」から最も愛される旅館へ」バックナンバー

0012021.11.24UP「子連れ旅行」について、伊勢志摩国立公園の中から考える。

旅館でお客様を待つ、新米若旦那、谷口

旅館でお客様を待つ、新米若旦那、谷口

 「子連れ旅行」
 と聞くと、あなたは、どんな情景や経験を思い浮かべますか?多くの方が、人生の中で一度は経験された家族での旅行。記憶を遡れば、
 「幼い頃、両親に連れられて出かけた観光地」
 「我が子を連れて行ったアトラクション施設」
 「夏休みに訪れた、祖父母の家」
 それぞれに懐かしい思い出があるのではないでしょうか。このレポは、そんな魅力に取りつかれ、子連れ旅行者から愛される旅館、観光地づくりに励む、一人の新米若旦那の物語です。


「子連れ旅行」は歓迎されざるお客様?

幼い頃、家族で出かけたサクランボ狩り

幼い頃、家族で出かけたサクランボ狩り

 「子ども」と一口に言っても、赤ちゃんから大人程の未成年まで幅広いお子様がいます。また、同じ年齢であっても、発達段階により大きく特性や状況も変化します。ちなみに、紀元前まで遡ると、古代ギリシャでは、およそ31歳を超えた人が精神の成熟を満たしているとして、それよりも年下の人は、子ども(大人ではない)と見なされていたという歴史もあります。時代によって、「子ども」という言葉が持つイメージも大きく変わるのですね。

 イギリス人考古学者のブライアン・フェイガンが、600万年前にアフリカ大陸から始まった「大陸を求める移動」を「グレートジャーニー」と名付け、現在にまで続く「旅」の期限の一つとされています。一方で、現代に普及している「家族旅行/子連れ旅行」という概念が定着し始めたのは、明治の中頃で、比較的新しいものです。

 現在では、すっかり市民権を得た「子連れ旅行」。しかし、宿泊業界では長らく敬遠される存在でもありました。子連れ旅行には、離乳食や貸し切り風呂の利用など、イレギュラーな対応が求められます。加えて、子どもの体調変化や持参する荷物の多さなどからも、受け入れ側の宿は「神経や手間がかかる割に、儲からない旅行者」として子連れ旅行者を見なしていました。


海外の家族文化 “A family that travel together stays together”.

イギリスで同僚だった友人の子どもたちと

イギリスで同僚だった友人の子どもたちと

 私は、高校卒業後、多くの時間を海外で過ごしました。アメリカ・イギリス・シンガポール・オランダなど、英語圏を中心に様々な国の人や、その国の子育てに触れる機会がありました。その中でも印象的だったのは、“A family that travels together stays together”(旅をする家族は、いつまでも家族だ)という考え方でした。

 欧米では、バケーション(仏:バカンス)という長期休暇取得文化があり、その際に家族で旅行に行くことが推奨されています。私の同僚も、その多くが、子どもや、祖父母を連れて旅行に出かけていました。バケーション明けに、出社すると、「旅先の思い出」や「予期しなかったトラブル」など、旅先での家族の思い出をワクワク話す、同僚や同級生が沢山いました。私には、彼らが、旅という手段を使って、自分と大切な人との繋がりを、再確認しているように感じられました。


世界から見た、日本の子育ての今

 帰国後、翻って考えると、旅館を営む家族の仕事柄、子ども時代の両親との旅行は、片手で数えるほどしかないことに、気が付きました。なお、これは、私に限ったことではありません。内閣府の調査では、欧米諸国に比べ、日本人の子どもが親と過ごす時間は、非常に少ないことが明らかになっています。
 また、OECDが発表した「子育てしやすい国ランキング2020(The Best Countries For Raising A Family In 2020)」では、加盟国35カ国の中で、日本は25位にランクされています。少子化が叫ばれ、子育て環境の改善が図られ長い時間が経ちますが、残念ながら大きな改善は見られていません。
 11月の衆議院議員選挙では、子ども庁の創設をはじめ、子育て世代に対して手厚い政策や取り組みが争点の一つになりましたが、まだまだ日本は、「子育て後進国」と言わざるを得ないような状況にあります。

「子育て家族に優しい宿泊施設」、という選択肢を、すべての旅先に

旅先でも家族が安心して団欒できる居場所を

旅先でも家族が安心して団欒できる居場所を

 「どこにも入れそうな旅館がない…」
 子育てを経験された方であれば、旅先で宿泊施設や食事場所を選ぶときに、苦労した経験や、困った経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
 私自身、8月に第一子が生まれ、絶賛子育て中ですが、宿泊はもちろん、1時間程度の外食でも、赤ちゃんや子どもを受け入れてくれる施設を探すのは一苦労です。
 特に、旅行の場合、大型の宿泊施設は、大規模なグループ旅行のニーズに応える仕様がスタンダードで、子育て家族が求める細やかなニーズに対応できない場合も多いです。

 社会の構造をいきなり大きく変えることはできませんが、観光という領域から、子育て世帯が旅行しやすいような環境を整備していくことは、日本の子育て環境や、家族の幸福度を上げる上でも、大切なことだと考えています。

 次回以降では、子育て世代が感じる旅先での大変なことや、苦労している事についてもう少し具体的に、深堀りして考えていきたいと思います。


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