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「続・現代狩猟生活」バックナンバー

0102018.04.10UP春は山菜・野草の季節

猟期が終わると…

 日本の多くの地域では、猟期は11月15日から2月15日の3ヶ月ですが、最近はシカやイノシシなど、生息数が多く農林業被害のある動物に限り、都道府県ごとに期間が延長されている例も増えてきています。僕の暮らす京都でも、上記2種に限り3月15日まで狩猟が可能です。
 僕の場合、獲物の脂のノリの良い猟期前半に集中して捕獲し、後半は捕った獲物の肉を燻製にしたり、来冬に向けた薪割りなんかに精を出すのが定番ですが、この頃になると、フキノトウやセリなどの山菜・野草も目にするようになり、春の息吹を感じるようになります。
 近頃は、猟期以外でも農林業被害対策のための有害鳥獣捕獲という活動をしている猟師も多く、年間を通して鳥獣の捕獲を行っていることもよくありますが、多くの猟師は、春は山菜・野草、夏は魚介類、秋はキノコ・山の果実など、季節ごとの自然の恵みをいただく日々を送っています。ニホンミツバチの養蜂をしたり、色々な生き物を飼ったり、猟師というのはとりあえず生き物と関わり、自然界から何かを獲ってくるのが大好きなタイプの人間で、なんやかんやと一年を通して山や川に出掛けています。

山菜採りは意外とシビア

 山菜採りや野草摘みというと、ハードなイメージの狩猟と比べるとソフトな印象があるかもしれません。ただ、定められた猟期の間にじっくりと獲物を狙うことが出来る狩猟に対し、採るタイミングをちょっとでも逃すと、生長しすぎて固くなってしまったり、姿を消してしまうので、その点では山菜・野草の方がシビアです。春の山野は一日ごとにどんどん様子が変わっていき、時期を逃すとあっという間に旬を過ぎてしまいます。
 多くの山菜・野草は新芽や生えたての時に採取します。その頃が柔らかく、アクも少ないからです。ワラビやゼンマイなどは葉が開いてしまったらただのシダになってしまいますし、ツクシもあっという間にスギナに変わります(スギナも乾燥させれば野草茶にはできますが)。タラノメやコシアブラなども新芽を食べます。
 また、狩猟の場合は決まった解禁日がありますが、山菜・野草は季節の変化とともに勝手に始まります。その年その年の天候や気温の違いで、採れる時期も変化します。また、平地と山の方では同じ山菜でも出る時期に差が出ます。
 「桜が咲いたら、ぼちぼちと春のきのこアミガサタケが出る頃だ」
 「イタドリが出てるってことは、もうワラビも生えてきてるはず」
 などと、常に季節の変化を気にしながら、そわそわしているのが春なのです。

自宅のすぐ裏で採取したワラビ
自宅のすぐ裏で採取したワラビ

アミガサタケは春に採れるキノコ
アミガサタケは春に採れるキノコ

ライバルの多い山菜採り

 免許制の狩猟と比べ、誰でも出来る山菜採りは、当然ライバルも多いです。ただ、相手が人間の場合は、他の人の来ないポイントを押さえておけばなんとでもなるのですが、そうは行かないライバルが野生動物です。草食動物であるシカは野草の新芽をかじりますし、イノシシはタケノコが大好物です。
 タケノコ掘りに関しては、イノシシには全く敵いません。彼らはその鋭い嗅覚で地中にあるタケノコを見つけ出し、数十キロある石でも平気でひっくり返す強靭な鼻を使って掘り返します。そもそもイノシシは早い年は12月くらいから地中深くのタケノコを食べています。山ぎわの竹林に入ってみたら一面イノシシが空けた大穴だらけということもよくあります。そんな時は悔しいというよりも、野生の力はすごいなあとただただ感心するばかりです。

節度ある山菜採りを

 田舎の方に行くと、「山菜の採取禁止!」という看板を目にすることがよくあります。週末になると、都会からやってきて田舎の山菜・野草を乱獲して帰る人が多いのだそうです。タラノメやコシアブラが欲しくて、ノコギリで木を切り倒して根こそぎ採っていく人もいるそうです。地元の人が大切に持続的に利用しているものをそのような形で奪うのは言語道断です。
 河川敷のツクシやヨモギ、ノビルなんかを採っていて問題になることはまずありませんが、私有林の山菜や野草は法的には土地所有者のものであり、それを勝手に採ることは森林窃盗罪に該当します。採取する際は土地所有者に確認するのが確実でしょう。特にタケノコやマツタケ、ゼンマイなど土地所有者がそのために山林を整備し、生業として利用しているようなものを勝手に採るのは窃盗にほかなりません。また、地域によっては入会権が設定されている場合もあります。
 山菜採りや野草摘みは地域に根ざした文化としての側面も強い営みです。節度を持って山の恵みをいただく暮らしを続けていきたいものです。

ウコギ科の新芽三種、タラノメ、コシアブラ、タカノツメ
ウコギ科の新芽三種、タラノメ、コシアブラ、タカノツメ


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