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「続・現代狩猟生活」バックナンバー

0052015.10.13UP外来種と狩猟「そこにいてはいけない」存在と向き合う

外来種に囲まれた暮らし

 最近の自然・環境・生き物関連のニュースなどを見ていると、獣害問題と並んでよく目につくのが外来種に関するものです。
 琵琶湖に繁茂する外来水草の駆除、巨大なカミツキガメの捕獲、多摩川に生息する多様な外来魚などなど。先日も九州への外来スズメバチの侵入のニュースが大きく取り上げられました。
 また、近年は北海道のカブトムシなど国内外来種の問題も指摘されるようになり、産地の違うホタルやメダカなどの放流による遺伝子交雑も問題となってきています。

 僕が小学生だった30年前でも身の回りには外来種がたくさんいました。小学校への通学路沿いの用水路にはカダヤシが泳いでいました。近所の大人はメダカだと言っていましたが、生き物の図鑑が愛読書だった僕は、その魚がボウフラ駆除のために海外から持ち込まれた「蚊絶やし」という名前を持つ外来種だということを知っていました。
 その頃の遊びといえば、近くの沼でのザリガニ釣り。僕の育った関西にはニホンザリガニは元々生息していないので、当然アメリカザリガニです。ウシガエルもよく捕まえました。僕の地域ではみな食用ガエルと呼んでおり、子どもたちの間では「ショックン」という愛称で呼ばれていました。縁日のカメすくいで捕ったミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)もずっとかわいがって飼っていましたが、飼えなくなって川に逃がす同級生もいました。
 このように現代日本の自然界には外来種があふれています。僕の場合は、こんな風に外来種と触れ合いながら、生き物好きになり、猟をするようにまでなったので、彼らを「駆除しなくてはならない存在」と見なさざるをえない外来種問題を考える時、いつも複雑な気分になります。

狩猟鳥獣の中の外来種

アライグマ捕獲数の推移(出典:環境省)
アライグマ捕獲数の推移(出典:環境省)

アライグマ(提供:環境省)
アライグマ(提供:環境省)

 日本では狩猟の対象となる動物は狩猟鳥獣として法律で定められていますが、その中にも外来種は含まれています。僕が狩猟を始めて、最初に接することになった外来種は、北米原産のアライグマでした。2005年の猟期、京都の自宅の裏山で自分の仕掛けたわなにかかっていたのです。アライグマは京都では寺社に住み着くこともあり、国宝や重要文化財に傷をつけたりすることも問題となっています。
 その後、所属する猟友会の有害捕獲活動でヌートリアの捕獲に立ち会うことも何度かありました。アライグマは解体して食べましたが、ヌートリアは駆除だったので、埋設処分となりました。
 この年はちょうど「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)が施行された年でした。この法律で「特定外来生物」に指定されると、飼育・運搬・放獣などが原則禁止されます(ただし、捕獲したその場での放獣は認められています)。狩猟鳥獣の中ではアライグマやヌートリア、タイワンリス、ミンクが指定されました。
 外来生物法施行以前は、有害鳥獣捕獲によりこれらの外来種対策は行われていましたが、法施行後は、同法に基づく「防除」による捕獲が中心となっています。
 なお、狩猟鳥獣の中には他にも外来種はいます。ハクビシン、コウライキジ、コジュケイ、チョウセンイタチ、チョウセンシマリスなどですが、これらは特定外来生物には指定されていません。一方、タイワンザルやマングース、キョンなどの哺乳類は、狩猟鳥獣には指定されていませんが、特定外来生物として防除の対象となっています。

「そこにいてはいけない」存在と向き合う

 僕自身は、あくまでも「自分が食べる肉を自分で調達する」ために狩猟をやっているので、外来種の駆除や防除の活動を主体的にやることはほとんどありません。それでも、猟期中の自分のわなにたまにアライグマがかかったりすると、ドキッとします。シカやイノシシがわなにかかっているのを見つけた時は「そこにいてくれてよかった」、「これでおいしいお肉が食べられる」と素直に喜べるのに対し、アライグマの場合は、本来「そこにいてはいけない」存在なので、食べるにしても逃がすにしてもなんだか複雑な心境になります。日本の生態系のことを考えると当然、その場から排除すべき存在なのですが、それは僕がやりたい狩猟とはある意味正反対の営みでもあるわけです。
 ヌートリアの駆除に同行した時、箱わなに親が入っていて、その近くを生まれたばかりのヌートリアの子どもがヨタヨタと泳いでいるのを見たことがあります。箱わなの中のヌートリアのトドメ刺しの準備をしながら、「こんなかわいらしいのに殺さなあかんなんて殺生な話やなあ」とつぶやいた猟友会の先輩の言葉が印象に残っています。

 勝手に連れて来られ、必要がなくなったら放置され、害があるとして殺される。彼らも間違いなく人間活動の被害者と言えるでしょう。ただ、彼らが存在することでその生存を脅かされる在来の動植物もいます。外来種問題に向き合う時、人間が自然や野生動植物に与えた影響の甚大さに愕然としてしまいます。

ヌートリア(提供:環境省)
ヌートリア(提供:環境省)

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このレポートへの感想

神社の池の主は、かつてはイシガメ・ゼニガメでしたが、いまはアカミミガメとなってしまいました。縁日の亀すくいで家庭に持ち込まれたミドリガメが、人間による保護のもと自立できるサイズに成長し、もてあました飼い主によって「動物愛護の実践」として先住カメの居る池に放たれてきたのです。日本全国でカメの分布に取り返しのつかない大変化が起きました。これからもなお。外国からさまざまな動植物を無制限に導入することを多様化につながることなどと大きな誤解をしている人もいるかと思います。学校教育、社会教育で市民の意識を変えていかねばと思います。
(2018.12.29)

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