狩猟をしているというと、よくこういう質問を受けます。私がわな猟で獲る獲物はイノシシとシカ、それに猟友会の網猟に参加すれば、カモやスズメ、ヒヨドリなども手に入ります。これらの獲物で1年間の肉がまかなえるかどうかというと、肉の量としては4人家族の我が家の場合、十分です。
イノシシやシカなら1頭あたり20?30kgの肉が手に入ります。日本人の平均的な食肉消費量は30kgだとか40kgだとか言われているので、それから考えると、5?6頭獲れば良いわけです。
では、「肉は完全に自給!」かというと、そうではありません。確かに一人暮らしの頃は、9割方は自分が獲った獲物の肉ばっかり食べていたようにも思いますが、結婚して家族ができてからは、それぞれの好みもあるし慣れもあるので、普通に家畜の肉を買って料理することもしばしばです。
牛肉はあまり食べる習慣がないので、買うことはまずありません。豚肉はイノシシ肉と同系統なので、これもそんなに買う必要はないです(ただ、ブロック肉を解凍し忘れた時は、スーパーで「豚バラ細切れ」なんてパックを手に取ることもあります)。我が家で一番買われる食肉はやはり鶏肉です。鶏肉はカモやスズメではなかなか代替は難しく、子どもたちのたまのお弁当にも、鶏の唐揚げはやはり外せない一品です。ちなみに、我が家ではニワトリも飼育していますが、これは採卵用なので食肉にはまわせません。
また、仕事中の昼食や家族での外食でも普通に家畜の肉を使った料理も食べるので、トータルで考えたら、狩猟で獲った獲物の肉が占める割合は6?7割程度かもしれません。まあ、自分が獲った獲物の肉だけで暮らさないといけないというこだわりも特にありません。子どもたちに「また、いのしし??」なんて言われるのは不本意ですし。
私は単独猟なので、獲った獲物はまるまる1頭自分のものになります。つまり、あらゆる部位の肉や内臓まで手に入るというわけです。なので、当然それの使い分けをする必要が出てきます。
例えば、イノシシ肉だと、よく脂がのるバラ肉や肉質のよいロース、脂と肉のバランスがよく大きなブロックが取れるモモ肉なんかが上等な部位になります。これらは来客がある時などに、鍋や焼き肉、すき焼きなんかで食べることが多いです。また、友人にあげたりするのも、やはりこれらの部位が基本になります。
となると、それ以外の部位の肉がどうしても残ります。ちょっと硬めの肩肉や、脂は乗っているけど独特の食感の首肉、筋っぽいスネ肉などです。必然的に、普段の食事ではこれらの部位を使うことが多くなります。肩肉はカレーやシチュー、首肉は我が家では豚汁ならぬイノシシ汁に使うことが多いです。スネ肉はスジ煮込み、心臓やレバーはニラレバ炒めなんかが定番です。また、わなに掛かった脚の肉は血が回って傷んでいたりするので、そんな肉は茹でこぼしてから時雨煮などに加工します。
あと、使い勝手のいいモモ肉は、500gくらいは常にスライスしてチルドルームに入れてあります。こうしておくと、野菜炒めや焼きそばなど、ちょっとした料理の時にすぐ使えて便利です。
我が家には肉の保存用に300リットルほどの容量のある業務用冷凍庫があります。これだと10頭分くらいの獲物の肉がストックできます。ただ、冷凍庫というのは何かと便利なので、肉以外の色んな食材もついつい冷凍して保存してしまいます。
猟師というのは、猟のシーズン以外でもなにがしか獲物を探して回る習性があります。私も例に漏れず、春には山菜採りや渓流釣り、夏はウナギやアユに海での素潜り、秋にはキノコやモクズガニなど、野山川海から美味しい食材を色々調達してくるのが大好きです。その結果、それらが全部冷凍庫に収まり、さらにシカの毛皮なんかも凍ってるもんだから、かなりカオスな状況になります。
そんな適当な状態で猟期に突入すると、肝心の肉が入り切らないという事態にもなってしまうので、毎年猟期前の1ヶ月くらいは、保存してある食材をどんどん消費するのが恒例です。昨猟期の肉がたくさん残っていたら、連日友人たちを招いて焼肉大会なんてこともしばしばです。ちなみに、業務用冷凍庫はマイナス50℃くらいまで下がるので、1年くらいは肉を冷凍しておいても何の問題もありません。
猟期が終わった3月、今期もありがたいことに十分なシカとイノシシの肉のストックが出来ました。暖かくなる前にまずは、イノシシのバラ肉のベーコンとシカのロースハムを仕込む予定です。
どんどん食べないと、8ヶ月後にはもう次の猟期がやってきます。
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