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「続・現代狩猟生活」バックナンバー

0022014.12.16UP狩猟と有害捕獲、ワイルドライフ・マネジメント

目的によって異なる捕獲の定義

 日本では各地で銃やわな・網を用いた野生鳥獣の捕獲が広く行われています。従事する者の多くが狩猟者であるため、それらは全て狩猟だと思われがちですが、厳密に言うとその目的によってその捕獲の定義は異なります。

  • 狩猟
     鳥獣保護法で「法定猟法により、狩猟鳥獣の捕獲等をする」ことと定義されています。狩猟免許が必要で、都道府県ごとに狩猟者登録し、可猟区域・猟期などを遵守する必要があります。狩猟税なども収めたうえで、自発的に行われるものが狩猟です。「スポーツハンティング」などと言われることもありますが、欧米などに比べ日本では捕獲した獲物の食肉利用を目的とした生活に根ざした狩猟が主流です。
  • 有害鳥獣捕獲
     鳥獣保護法の「鳥獣による生活環境、農林水産業又は生態系に係る被害を防止」するという目的のために行われる捕獲行為がこれにあたります。「有害駆除」と呼ばれることが多く、農家などから被害申請があった際に各自治体が鳥獣の種類・捕獲数・区域・期間などを決定して許可を出します。ドバト、サル、カモシカなどの非狩猟鳥獣が対象となることもあります。市街地に出没したクマの緊急捕獲もこれに該当します。
  • 管理捕獲
     都道府県が個別の鳥獣に関して「特定鳥獣保護管理計画」を策定して実施するのが管理捕獲です。個体数管理のための捕獲だけでなく、「実施鳥獣の生息環境の整備、鳥獣による被害の防除等、様々な手段を講じる必要」があります。現状はシカやイノシシ、サル、クマ、カワウなど人間生活に影響を与える鳥獣が対象とされることがほとんどです。
  • その他
     上記以外でも、研究・調査などが目的の「学術捕獲」、外来生物法によるアライグマやヌートリア、タイワンリスなどの外来種を対象とした「防除のための捕獲」などもあります。

ワナにかかったシカ
ワナにかかったシカ

ワナにかかったイノシシ
ワナにかかったイノシシ


「駆除」が優先される現状

 近年、シカやイノシシなどによる農林業被害の増加を受け、有害捕獲がどんどん増えていっています。これまでは狩猟者がその技術を活かして、シーズン外にボランティア的に行う社会貢献というくらいの位置づけだったのが、最近では有害捕獲のほうがメインの活動となっているところが増えています。統計の数字を見ても、これまではずっと狩猟での捕獲数が有害捕獲の数字を上回っていたのが、2010年についにシカ・イノシシともに逆転しました。
 これは銃猟者が減少傾向にあるのに対して、わな猟が増加傾向にあることも影響しています。金銭面でも手続き面でも取得へのハードルが低いわな猟免許は、農業者に対して自衛の手段として自治体や農協などで積極的に薦められています。もともと被害防止目的で狩猟免許を取る人が増えているというわけです。
 「環境省がシカ・イノシシの生息数を10年で半減させる」「農水省が30万頭の緊急捕獲のための大型補正予算を計上」などというニュースを目にした方も多いと思います。今後も農林業や生態系への被害防止を目的とした有害捕獲の割合が増加していくのは間違いないでしょう。

狩猟及び有害捕獲等によるイノシシの捕獲数推移(出典:環境省)
狩猟及び有害捕獲等によるイノシシの捕獲数推移(出典:環境省)

狩猟及び有害捕獲等によるシカの捕獲数推移(出典:環境省)
狩猟及び有害捕獲等によるシカの捕獲数推移(出典:環境省)


ワイルドライフ・マネジメントと一般狩猟の重要性

野生鳥獣による農作物被害金額の推移(出典:農水省)
野生鳥獣による農作物被害金額の推移(出典:農水省)

 全国の野生鳥獣による農業被害の総額は230億円(2012年)です。このような状況では「どんどん獲って、どんどん減らせ」となるのは一定やむを得ませんが、野生鳥獣政策は本来は「ワイルドライフ・マネジメント」と呼ばれる管理捕獲のような形での生息域・個体数管理が中心となるべきものです。
 シカ・イノシシなどが激増している現状では想像がつかないかもしれませんが、かつてこれらの動物は乱獲や生息環境の悪化で激減していたことがあります。例えば、北海道では明治の頃、缶詰工場まで作ってエゾシカを乱獲した結果、絶滅寸前にまで減少しました(大雪の影響もあったとされています)。また、日本の各地に現在もシカやイノシシの生息していない森がありますが、その多くは江戸時代などに農業被害をなくすために根絶させられたという歴史があります。
 こういった過去を繰り返さないためにも、しっかりとした調査を行ったうえでの個体数管理が将来的には必ず必要になってきます。ただ、これを実施するためにはかなりの費用と労力が必要になるのも事実です。
 ここで重要になってくるのが一般狩猟です。狩猟者は自分の猟場では継続して猟を行いたいと考えるので、獲り過ぎることはありません。また、シカなどの一部の動物だけが増え過ぎて、森の生態系が乱れることも望みません。食べ物が足りなくて痩せたシカなど獲ってもその肉は美味しくもありません。
 また、それぞれの縄張りもあるので、ある意味まんべんなく色々な山で捕獲が行われます。つまり、こういった狩猟者が増えることは結果としては自律的な個体数管理が各地で行われるということになります。
 一般狩猟はよくただの「趣味」と片付けられがちですが、金儲け目的ではない生活の一部としての狩猟を行う者が各地の山際で暮らすことは、鳥獣被害の防止にも繋がり、現在の人間と野生動物の不幸な関係を改善するために非常に意義のあることだと言えます。


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このレポートへの感想

農林業食害を、有害:管理捕獲の理由としているが、野生動物増えることが、林農食害の原因であろうか?林業云々は冤罪り、真犯人は戦後昭和針葉樹人工林行政であること明白。農食害被害200億円たるは、生産者集出荷価格総計?入荷量減少して高騰?
駆除報奨金全額被害農家さんへ寄付すべきだろう。
(2019.06.03)

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