狩猟というと野山に囲まれた田舎で行われているというイメージが強いと思います。「狩猟には興味があるけど、街に住んでいるのでなかなか始められない」という話もよく聞きます。しかし、実は現代の日本では東京や名古屋、大阪などの一部の大都市圏を除けば、大概の街で狩猟生活は可能です。試しにインターネットの航空写真で日本地図を開いてみて下さい。日本列島の多くの地域は広大な山林に覆われているのがわかります。大概の地方都市なら街の中心部からでも30分も車を走らせれば緑色の山間部へと到達できるはずです。前回取り上げた仕事との兼ね合いさえ問題ないのであれば、わな猟だって行うことは可能です。
かつて大型獣が減少していた時代は、奥山の方へ行かないとなかなか獲物に巡り会えませんでした。それが近年は、放置された里山がシカやイノシシたちの絶好の餌場になっており、生息数の増加に加え、むしろ人里近くの山に獲物がたくさんいるというような状況です。現代は、街で暮らしながら狩猟生活を送るのに最適な時代と言っても言い過ぎではないと思います。
私が住んでいるのは京都市ですが、100万都市である京都でも各地に狩猟者はたくさん住んでいますし、それぞれの地域に猟友会の支部も存在しています。
また、狩猟には、私が行っている大型獣を狙ったわな猟以外にも、グループで行う追い山猟や空気銃による鳥撃ち、ハクビシンやアライグマ、ヌートリアなどの小型獣を狙う箱わな猟、カモやスズメなどを対象とした網猟など、様々なバリエーションがあります。「自分はこういう猟がしたい!」という考えもあるかと思いますが、住んでいる地域と周辺の自然環境を観察して、どのような猟を行うのに適しているかを考えるのも大切です。そのほうが無理なく自分の生活に狩猟を組み込んでいくことができるでしょう。
ただ、猟を始めるうえで考えておかないといけないのは、獲った獲物の解体をどこでやるかという問題です。ヒヨドリ、カモなどの鳥なら一般家庭の台所で十分可能です。ハクビシンなどの小型獣もぎりぎりいけるかもしれません。浴室などを利用して解体をする人もいます。ただ、寄生しているマダニの問題や衛生面などを考えると、そのまま屋内に持ち込むのは控えるのが賢明です。
シカやイノシシなどの大型獣になると、屋内での解体はまず無理です。狩猟が盛んな地域なら、庭先での解体も住民に許容されていますが、普通の住宅街で人目につく場所では嫌がられることも多いでしょう。街で暮らしながら猟をするのに最大のネックとなるのが実はこの解体場所の問題なのです。【*】
この問題を実際に猟をしている人がどのようにクリアしているかというと、仲の良い狩猟者同士で解体場所を共同利用しているというケースが一番多いように思います。それは個人がその場を提供していることもあれば、猟友会や狩猟グループで狩猟小屋を所有・管理している場合もあります。これから猟を始めようという人は一度、自分が住んでいる地域の猟友会に問い合わせてみるのも良いでしょう。
わな猟などで完全に単独猟で行っているという人の中には、獲物の解体は猟場で済ませるという人もいます。きれいな沢水などが使える場所で解体し、大バラシまで済ませてから持ち帰り、細かい精肉作業だけ自宅の台所で行うという方法です。ただ、屋外で解体する場合、土や落ち葉などの汚れの付着など衛生管理に特に気を使う必要があります。また、獲物の残滓を放置せず、しっかりと処理する必要があるのは言うまでもありません。
私の場合、京都とは言え、山あいの地域に暮らしているので、獲物の解体は自宅の軒を延ばして作った解体スペースで行っていました。その後、結婚したり子どもが生まれたりする中で、「家のそばでの解体はマダニの侵入の危険性もあるので避けたい」という話になり、家からある程度離れた敷地内に解体小屋を自作することになりました。
小屋を自作するというと大層に聞こえるかもしれませんが、林業家の方から間伐材を無料で譲っていただき、建築足場を組む要領で番線で縛って作った簡易的なものです。解体用のステンレステーブルやシンクなども廃業したレストランの備品を安く譲ってもらったものを使っています。獣肉の販売を行うための解体施設なら、保健所から食肉処理業の許可を得るための設備や基準などが定められていますが、自家消費のための解体スペースならそこまでする必要はありません。
我が家の解体小屋は、1階の解体スペースには、獲物を吊り上げるチェーンブロックや重量を計る吊りはかり、業務用冷凍庫が設置してあり、2階部分は、猟関係の道具の保管場所となっています。奥のスペースにはガスコンロと調理・休憩スペースも作ってあり、解体後の簡単な宴会くらいなら出来るようにもなっています。
狩猟をしようとすると色々と道具も必要になってきて、その置き場所に困ることもあります。自宅周辺に適した場所があったり、猟場の近くで安く土地が借りられるなどの条件が合うならば、猟具置き場も兼ねた解体小屋を自作するというのもひとつの選択肢だと思います。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.