紙布(しふ)で作られた服をご存じでしょうか。
ネパールを中心に活動するネパリ・バザーロというフェアトレード団体とその現地パートナーによって作られたもので、くしゃっとした独特の肌触りと天然のシワ加工のような風合いが特徴です。
材料になるのは、ロクタと呼ばれる木から作ったロクタ紙という手すきの紙です。とてもしっかりした紙で、ネパール国内だけでなく日本にも輸入されています。ただ、紙そのものではそれほど売れないため、より付加価値のついた商品を生産者が作れるように考え出されたのがこの紙布です。プロジェクトは2001年に立ち上がり、2006年に製品ができあがりました。
紙から服が作れるの? という声が聞こえてきそうですが、日本にもその昔、紙から服を作ることがあったようです。江戸時代から始まったといわれる紙布づくり。一部の高級品は幕府、或いは京都の公家たちへ特産品として献上されるようになったといわれています。
ロクタ紙は、ロクタと呼ばれる木の内側の部分を取り出し、たたいて繊維を柔らかくしたあと、漉いて作ります。このロクタ紙を裁断し、縒(よ)って細い糸に仕上げます。それを手織りで布に仕立てるという気が遠くなるような手間をかけて紙布が作られるのです。できた布は、草木染めしたあと、縫製され1枚の服になります。
ネパリ・バザーロでは、自然の風合いを大切にするため、また現地にあるものを利用するため、衣類の染色には草木染めを積極的に用いています。その草木染めのひとつ、柿渋染めは、日本人によってネパールで広まったものです。ネパールで、柿は食用としてあまり好まれず、カラスの餌になっていたといいます。そんな時、海外青年協力隊としてネパールに派遣され、農業試験場で活動していた日本人が柿渋染めをネパールの人たちに広めたということです。
紙布は日本のフェアトレード団体の試みで、素材づくりから製品化までフェアトレード生産者が担っていますが、一方、フェアトレード生産者によって作られたパーツを使い、日本人のデザイナーがアクセサリーに仕立てたものもあります。デザイン性を重視した世界各国のフェアトレード商品を取り扱っている、LOVE & SENCEというブランドのオリジナル・フエルトアクセサリーは、ネパールの生産者が手作りしたフエルトのパーツを用いて、日本で作られました。
フェアトレードの主旨に賛同したデザイナーが、素材の色や形からインスピレーションを得て、日本人のファッションスタイルに無理なく使うことが出来るようにデザインしたのです。留め金などのパーツは、現時点では精度の高いものがネパールで入手しにくいため日本で調達しています。
フェアトレードを特別なものではなく、普段の生活の中で身近に使ってもらうことが大事。そして、フェアトレードの商品を購入することがオシャレでカッコイイと感じてもらえるように作られています。
ファッションは、ブランドはもちろん、素材やデザインも大きな魅力ですが、こんな物語のある服やアクセサリーというのも魅力のひとつになるのではないでしょうか。
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