毎日同じようなルートを走る自転車通勤ですが、季節ごとに風景は移り変わります。
つぼみだった花が咲いたら、見慣れた風景であっても、そこだけハレに変わるのです。電車通勤をしていたら、きっと気付かないでしょう。
歩くより速く景色が変わるのも良い刺激になります。寝ぼけ眼で電車を乗り継いで何とか会社まで辿り着く人と違い、自分の脚で自転車を漕いで行くツーキニストには景色がハッキリと見て取れます。受動的に「見える」景色ではなく、能動的に景色を「視る」という感覚です。「心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食らえどもその味を知らず」という言葉がありますが、能動的に生活していくことで、より深く人生を味わえると思います。
確かに夏は暑く冬は寒いですが、走り出すたびに汗が蒸発したり、落ち葉を踏みつつ冷えた空気の中を走ったりする心地良さに気付くはずです。
電車だと通り過ぎるだけの街でも自転車で走ればマイタウンになります。
以前、足立区に住み港区の新橋にある会社まで通っていた頃、途中にある尾久銀座や谷中よみせ通りを走る通勤ルートをベストコースと決めていました。谷中は有名なお店も多いので、いつも賑わっていて実に楽しいルートでした。谷中にはまったく縁のなかった私ですが、毎日通ることで愛着が湧き、すっかり気に入り、コーヒー豆を買ってその場で煎ってもらったり、メンチカツを食べながら街歩きしたり、お惣菜を買って帰ったりしていました。下町情緒の残る街並みには古くからのお店も多く、走っていて楽しい街です。
地図を片手に食べ歩きをする趣味のない私でも、店先に「雑誌で紹介されました」と切り抜きが貼ってあれば、通るたびに気になります。家族の誕生日にアップルパイを買って帰ってあげようかなとか、今度、手土産に持って行こうかなどと考えるのも楽しいものです。こんな風に通勤ルート上にある街がマイタウンになれば、自転車通勤は楽しくて仕方がなくなります。私がすんなり自転車通勤にのめり込んだのは、始めた頃の通勤ルート上に尾久や谷中の存在があったからだと思います。
数ある通勤ルートの中から選りすぐってベストコースを決めたとしても、毎日同じルートばかりでは、だんだんと飽きてきます。もしかすると今まで知らなかっただけで、探してみると現時点のベストコースよりも素敵な通勤ルートが隠れているかもしれません。
特に興味深いのは住宅街にある抜け道です。私がよく使う手は、抜け道を知っていそうなクルマの後について行くこと。時にはドライバーの自宅までついて行くだけになってしまうこともありますが、高い確率で抜け道を発見することができます。文字通り、ほんの少しの冒険ですがワクワク・ドキドキしますよ。
ここでは、自転車通勤が運動不足解消とダイエットに最適だということを、改めて強調したいと思います。
私は運動不足解消とダイエット目的で自転車通勤を始めました。ところが始めてから5年間はいっこうに痩せませんでした。やり方が悪いのかもしれないとは思いましたが、もう年も年だし、痩せ方も判らないので半分は諦めていたのです。
でも中高年男性向けの痩せ方が判れば、多くの肥満に悩む人々に希望を与えられると一念発起して、半年間かけて自らのカラダで実験を繰り返し、ついに痩せる技術を確立したのです。自転車運動(有酸素運動)とロープ体操(無酸素運動)と適食(一人前ダイエット)を組み合わせて、ひとつずつ順番に「心のスイッチ」を入れていけば、誰でも簡単に、たくましく痩せられるメソッドです。詳しくは『これが男の痩せ方だ!』(サイクルプレス刊)として出版しましたので、そちらに譲るとします。
通勤ではありませんが、むかしむかし自転車やっていたころにも思っていました。エンジンが自身の足ですから、風を感じ、景色を愛で、程よい疲労感と結果としてのシェイプアップ、当時はおかげズボンのサイズが大きくなってしまい。吊るしの背広では往生したことを思い出しました。今思えば健康な生活を送っていたのだなと改めて思い返しています。
(2012.06.11)
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