グリーン電力証書という、自然エネルギーを広めるための仕組みをご存知でしょうか?
すでに多くの企業や自治体が利用しています。今回はその内容を詳しくご紹介したいと思います。
グリーン電力とは、太陽エネルギーなど環境への影響が小さい自然エネルギーから生み出される電力のことです。最近注目されている太陽光発電のほか、風力発電、バイオマス発電、地熱発電そして小水力発電などがこれに当たります。
グリーン電力証書は、このグリーン電力の環境に対する付加価値の部分を証書の形にして発行し、それを購入した企業や個人が簡単にグリーン電力を利用することができる民間レベルの仕組みです。太陽光発電などの自然エネルギー設備を設置できない事業所や家庭でも、この証書を利用することにより、自然エネルギーから生まれた電気を利用したと見なすことができます。
国の自然エネルギーの普及政策にはRPS法【1】や様々な補助金の制度がありますが、必ずしも効果的で十分とは言えません。地方自治体においても前回のレポートでご紹介した東京都のように大胆な自然エネルギー普及政策が期待されていますが、通常は太陽光発電への補助制度などに留まっています。
欧州では自然エネルギーで発電した電力の固定価格買取制度(FIT制度)がすでに始まっており、自然エネルギーの比較的高い発電コストを、多くの電力消費者で広く薄く負担しています。それに比べ、日本では自然エネルギーを選択し、そこにお金を支払うことが通常は困難です。
けれども、グリーン電力証書制度を利用することにより、企業や個人がグリーン電力の環境価値に対して対価を支払い、自然エネルギーの普及を支援することができるのです。
グリーン電力証書制度では、第三者機関である「グリーンエネルギー認証センター」による認定を予め受けた発電設備から生み出される電力が対象となります。認定された発電設備から生み出された電力はきちんと計測されます。そして、電力会社へ販売した余剰電力や発電のために消費された分を差し引いた上で、グリーン電力として、再びセンターの認証を受ける必要があります。
これらの一連の手続きを行い、証書を発行するのが「証書発行事業者」です。現在、国内には30近い証書発行事業者があり、グリーン電力を生み出す発電設備の数も130を超えました。個人や企業がグリーン電力を使いたいときは、これらの事業者から証書を購入して、普段使っている電力をグリーンにすることができます。
2001年から始まったグリーン電力証書の仕組みは、企業のCSR(社会的責任)活動の一環としても利用されており、2008年度の発行量は1億5千万kWhを超えています。日本全体の年間電力消費量が約1兆kWhなので、その約6千分の一ということになりますが、グリーン電力の認証量や証書発行量は、年々、着実に増加しています。
2009年度からは、電力に加えて“グリーン熱”の証書制度も開始され、東京都の太陽熱利用機器に対する補助金の利用条件ともなっています。これまで注目されてこなかった太陽熱などのグリーンな「熱エネルギー(グリーン熱)」と「グリーン電力」を合わせて“グリーンエネルギー”という言い方もされていて、バランスのとれた自然エネルギー普及への支援として期待されています。
(環境エネルギー政策研究所 主席研究員 松原弘直)
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