かつて自動車の普及が社会や文化を変えたように、自然エネルギーの普及も私たちの生活を変えていくと考えられます。素朴な自給自足をイメージする人も少なくありませんが、むしろ暮らしと社会の質が高まることが期待されます。
日本の住まいは、吉田兼好の「住まいは夏を旨とすべし」に代表されるように、冬を軽視してきました。そのため、すきま風とぺらぺらの壁で、寒くてたまらない家が今日でも普通に見られます。これは、エネルギー浪費的な暖房をまねいて地球環境にも悪い上に、暮らしている人にもやさしくありません。
高断熱・高気密(もちろん適切な換気あり)やパッシブソーラー【1】の技術を上手に使うことで、地球環境にも住まい手にも、そしてお財布にもやさしい住宅となり、暮らしの質を高めることになります。
地球温暖化防止のために大きな経済的負担がかかると思い込んでいる人が少なくありません。しかし今、グリーン・ニューディール【2】の中核として世界中で取り組んでいる自然エネルギーへの大規模な投資は、温室効果ガスの削減・エネルギーの自立・新しい産業の創出・グリーン雇用の創出など、さまざまな社会的恩恵をもたらし、経済的に見ても投資額よりもはるかに大きな便益が期待されています。
すでに自然エネルギーは、世界で年率50%を超える成長が続き、10年ほどで自動車産業の規模に追いつき追い越す勢いです。時価総額が1兆円を超える自然エネルギー企業が相次いで誕生しており、21世紀の産業の主役になろうとしているのです。
しかも、グーグルやインテルなどIT企業が相次いで参入し、「スマートグリッド【3】」などインターネットと自然エネルギーが融合する新しい産業革新も期待されています。このように、経済面でもITからET(エネルギー技術)への大きな流れをみることができます。
また、雇用も大きく変化します。現在、世界で230万人とされる自然エネルギー関連の雇用者数は、2030年までに2000万人以上に達すると言われています。
たんに雇用を増やすだけでなく、質的な効果もあります。政策や金融、インターネットなどを駆使した知的でクリエイティブな仕事が多い上に、地球環境の危機を救い、未来をつくるグリーンジョブに従事していることは、自分にとっても、また子どもたちや未来の世代にとっても胸を張ることのできる「誇りある仕事」です。
自然エネルギーは一極集中型ではなく地方分散型なので、世界レベルで見ても、国レベルで見ても、それぞれの地域の特性を活かして自然エネルギー事業に取り組めます。発展途上国でも、過疎化が進んだ地域でも、事業と雇用を創出することができます。
そうした国や地域に、みんなが誇りを持つことができる知的な仕事がどんどん増えることで、社会全体の持続可能性(サステナビリティ)が高まることでしょう。
(環境エネルギー政策研究所 所長 飯田哲也)
エコはかんきょうにいいと思う
(2014.01.22)
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