前回まで、スマート・ハウスがICT(情報通信技術)を活用して自ら「最適化」を実現する「賢さ」と、さらに創エネ機能と結びつきエネルギー自給自足生活への期待も大きいことを紹介しました。しかし、スマート・ハウスの「賢さ」は最先端さだけではありません。日本家屋の伝統的な知恵もたくさん取り入れられていて、最先端技術と温故知新の技との融合によって、その「賢さ」にいっそう磨きがかかっています。
【図1】屋根に設置された太陽光パネル
出典:Wikipedia - 太陽光発電
日本家屋といえば、まず頭に浮かぶのが木材に障子・ふすま(襖)です。障子やふすま、それに木材は室内の温か味を増し、安らぎや癒しを与えてくれる効果があります。また、窓に使われる障子は外からの光を和らげながら室内に取り込む採光調整機能もあります。床や天井に使われる木材は室内の吸音効果や湿度調整の効果も期待できます。
ふすまによって屋内の間取りを適切に区切ることで、小部屋から広間まで空間を柔軟にデザインすることができます。同時に、ふすまや障子を開閉することで屋内に空気の流れを作り出すことができ、体感効果も含めて室内の温度整効果を高めることができます(図1)。
さらに、現在では使われることがあまり多くなくなった「土壁」です。土壁にも様々な材料がありますが、いま関心が高まっているのが「珪藻土」【1】です。珪藻土にはスポンジのように細かな孔(あな)がたくさんあり、水をかけてもすぐに吸収してしまうほどの高い吸湿性があります。室内の壁にこれを塗ると、湿度の高いときには水分を吸収し、逆に低いときには水分を放出して室内の湿度をほぼ一定に保つ調湿効果を発揮してくれます。この調湿機能によって室内の温度調整効果を高めるだけでなく、その他に断熱効果、消臭効果、吸音・防音効果や防火効果など様々な効果が期待できます。
【図2】多重窓ガラスの例(日本板硝子株式会社提供)
日本家屋の伝統技術は現在も効果的ですが、窓部の障子については気温・湿度調整に対してあまり大きな効果が得られないため、従来からも外側にガラス窓を設置する組み合わせが多く使われています。窓ガラスの多くは一枚ガラスでしたが、近年二枚以上のガラスを組み合わせた多重窓ガラスの開発が進み、多くの商品が提供されるようになってきました(図2)。多重ガラス窓の基本構造はガラス板を二重にしてその間にガスを入れたり、断熱膜を貼るなどして断熱性や遮熱性を高めています。
【図3】スマート・ハウスのパッシブデザイン(大和ハウス提供)
その他、窓外の遮熱スクリーンや植物を利用したグリーンカーテン、軒の長さ調節によって夏期・冬期の太陽光の取り入れ方を調整して、光や熱をコントロールする工夫もされています。また、家の周辺の空きスペースや屋上に緑を作ることによって家外部の温度調整の効果を得るだけでなく、感覚的な安らぎや癒し効果も含めた快適さを創り出す工夫がなされています(図3)。
前回までに紹介してきた先端技術のICTや創エネ技術を取り入れて積極的に家のいろいろな機能をコントロールしていこうとするだけでなく、今回紹介したような日本家屋の伝統的な技とコラボレーションさせていることがスマート・ハウスの本当の「賢さ」であり、強みになっていくものと思います。
Copyright (C) 2009 ECO NAVI -EIC NET ECO LIFE-. All rights reserved.