ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)の概要
(出典:資源エネルギー庁「2006年版エネルギー白書、第1部第2節 省エネルギーの推進」)
スマート・ハウスの最大の特徴は、なんといっても家全体でエネルギーや資源の消費を最適化して無駄を減らすことが可能になる点にあります。それを実現するのが“HEMS(Home Energy Management System:ヘムス)”と呼ばれる仕組みです。これは、家庭内にあるエネルギーや資源を使うあらゆる機器の動作状況をリアルタイムに監視しながら、同時に最適な制御をして無駄を省こうとする仕組みです(図)。
家庭内の電気使用の無駄を省く場合を考えてみると、大もとの電気メータの数値を見ただけでは総使用量以外には何もわかりません。そこで、エアコンやテレビなど電気機器の消費電力を個別に測る必要が出てきます。さらに、エアコンであれば、人が室内に居るか居ないかを識別したり、部屋の温度・湿度、明るさなど人が快適に感じる要因をリアルタイムで検知しながらエアコンの稼働状態をきめ細かに制御します。このようにして人がいない部屋を冷やしたり、居ても冷やし過ぎたりといった無駄なエアコンの運転を無くすことによって電力消費を減らすことが可能になります。
テレビや冷蔵庫の詰め過ぎや、洗濯機の水使用量、照明器具の明るさの調整など電気を使ういろんな機器についても同じように管理することを目指しています。
HEMSの表示例(出典:NECのスマートエネルギーソリューションHEMS)
きめ細かなコントロールを実現するために、家庭内にある各種家電製品や照明器具自体はもとより、各機器に電気を送る室内の配線やコンセント部などありとあらゆる点で、電力量と温度、湿度、風力、明るさ、におい、画像(色)などいろんなデータを測定するセンサーが設置され常に検知しています。センサが検出したデータや情報は家庭内の情報ネットワーク(無線または有線)を通じて家庭用サーバー(高機能のパソコンみたいなもの)に集められ、集計・分析された結果がパソコンやインターネットにつながったテレビに表示できるようになっています(図)。
このようにHEMSの機能を実現し大きな威力を発揮できるようにするためには、コンピュータやネットワークを駆使した高度な情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)が不可欠になっています。
電気を例にしてHEMSの機能をご紹介しましたが、この他の燃料(ガス、ガソリン、灯油など)や水の使用量についても同様に検知して、生活する人にとって快適で、しかもエネルギーや資源の利用効率を最大にするための仕組みがHEMSです。
現状、わかりやすい表示によってまずは生活者の意識向上による省エネ効果が期待されている部分もあります。しかし、HEMSの開発は加速しており、人工知能化が高度化して不要なところや無駄な部分についてアドバイスを提供したり、さらには自律的に最適に制御できるようになる時期もすぐそこまで来ています。環境への影響の低減と最適空間の実現を両立させるために、まるで「家」自身が「頭脳と神経網」を進化させていくような状況です。
今後、太陽光発電などの自然エネルギー源と連携させることによって、エネルギーの自給自足も夢物語ではなくなります。
次回は、スマートハウスのエネルギー自給自足の可能性についてご紹介したいと思います。
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