南房総・館山の海は、サンゴが生息する北限域であり、全国的に知られる“ウミホタル”の里海だ。周辺の海岸では様々な漂着物に出会え、海岸浴をしながらのビーチコーミング【1】が地元人だけでなく観光客にも密かな楽しみとなっている。
今回は、南房総・館山の知られざる魅力を体験しよう。
朝7:00、ロビーに集合し、目の前の海岸へ出発。
海岸へ出ると、まずは潮の香りがお出迎え。朝の眠気も一発で消える。海岸植物のハマダイコン、コマツヨイグサ、ハマヒルガオなどが目の前に広がり、そのすぐ先に砂浜、そして館山湾が広がる。
初めに海風浴【2】の説明をしながら、軽い体操。富士山・沖ノ島などの景色を眺めての海の説明と続き、いよいよ砂浜に下りてのビーチコーミングとなる。
休暇村前の海は、岩場と砂地が混合した地形で、多くの生物が生息している。多種多様な貝類が拾え、大きさも1mmほどから30cmを超える大型の貝まで様々だ。
中でも1番の人気はタカラガイ(宝貝)。日本では約90種、房総にも約50種みられ、大きさや模様・色あいなどを競い合うほど。「子安貝」と呼ばれて安産のお守りとされたり、昔は貨幣として使われたりもした。
歩き始めてすぐ目に付くのが「多数の穴のある石」。カモメ貝などの穿孔貝が空けた穴で、中に貝が入っている場合もある。
ガラスもよく落ちている。漂着しているガラスは角が取れ、磨りガラスのよう。これらはシーグラスと呼ばれ、ランプシェードやステンドグラスにも使われる人気の素材だ。
その他、カジメなどの海藻の切れ端や、カメ、鳥、イルカ・マンタなどの動物の羽や骨、キクメイシ科のサンゴの欠片といった様々な漂着物も拾えて、多くの生物がこの海に生息している事を裏付ける。さらに、流木、海外のゴミ、ヤシの実、イルカ・動物・貝などの化石、縄文土器・石器なども漂着。3年前には小判(時価50万円ほど)も打ちあがった。
約30分の海岸散歩が終わる頃には、ミネラルを含んだ潮風で体は温まり、手には数多くの「お宝」を抱え、気分も爽快になる。
拾った貝は、夜のクラフト教室で貝の宝石やストラップの材料となる。海からの贈り物で世界に一つだけのアクセサリーができると好評だ。アクセサリーを作りながら講師の話を聞いて、参加者に海への思いを深めてもらうのもねらいだ。
館山の海は、波が静かで砂地が多く、エサも豊富で水がきれいなため、ウミホタルがたくさんいることで全国的に有名だ。
ウミホタルは、海老などと同じ甲殻類に属し、成長すると3mmほどになる。外海に面した砂地の海にすんでいて、昼間は砂の中ですごし、夜になると砂の中から出てきて活動する。敵の来襲など刺激を受けると泳ぎながら2種類の発光液を出し、それらが海中で反応して光る。そのため、ウミホタルの泳いだ後が青白い光の糸のように見える。
このウミホタルを採集して、参加者の目の前で解説を交えながら実際に発光させ、神秘的に青白く光るウミホタルを見ていただくのが、「ウミホタルの発光鑑賞会」だ。
残念ながら、現在ウミホタルが採集できなくなって、観賞会は行えていない。原因は不明だが、温暖化(海水温の上昇)や桟橋の工事・開発で、ウミホタルの住処がなくなったためとも言われている。
調査の結果、ウミホタルがまだ生息していることが確認されているが、発光鑑賞会を毎日開催するまでには至っていない。
今後、海の大切さ・素晴らしさを伝えるために必要不可欠なこの「ウミホタル」が、またこの地に戻ってくる事を切に願っている。
(休暇村館山 営業主任 鈴木信也)
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