気仙沼港から旅客船で25分。周囲22km・人口約3,300人の気仙沼大島は、人が住む離島としては東北地方最大の島です。
ウミネコの歓迎を受けながら船から海上を見ると、竹や木で組まれた「いかだ」や、ロープに結び付けられたオレンジ色の「浮き」が数多く浮かんでいる光景が目に入ります。これらは牡蠣(カキ)・ホタテ・.ホヤ・ワカメなどの養殖場なのです。
気仙沼湾は、その地形から外洋の影響を受けにくく、養殖業に適した環境です。また、気仙沼地方で行われている養殖は、餌の投与をせず、海そのものからもたらされる養分だけで成長するため、「環境に優しい漁業・環境に負担をかけない漁業」とも言われています。
逆に言うと、天候不順や異常気象などの影響を受けやすいということ。なんといっても生活排水や工業排水などによる水質悪化が起これば、甚大な被害を受けることになります。
ですから、養殖業に携わる人々にとって、美しく豊かな海を守り育てる意識が重要になります。
「森は海の恋人 運動」【註】をご存知でしょうか?
大島の対岸、唐桑半島の舞根湾(もうねわん)でカキの養殖業を営んでいる畠山重篤(はたけやましげあつ)さんが海と森のつながりの大切さを説き、広めた、気仙沼の母なる川・大川の水源・室根山(むろねさん)に木を植える運動のことです。
森の腐葉土を通った水の中には、海の生き物が育つために欠かすことのできない植物プランクトンを成長させる養分が含まれているのです。
こうような運動に支えられ、気仙沼湾での「養殖業」が営まれています。
休暇村気仙沼大島では、実際の養殖業に触れ、ホタテ・ホヤなどをその場で試食できる「ふれあいプログラム 養殖筏体験」を実施しています。
3・4月は「ワカメ」、5?8月は「ホタテとホヤ」、9・10月は「ホタテ」、11?2月は「牡蠣」と、1年を通じて違った体験ができます。
休暇村から車で約5分の「長崎港」へ。ライフジャケットを着用して、25人乗りの「キャビン・トイレ付」の船に乗ります。
案内は、養殖業をはじめとする漁業を営むおおしま丸の畠山勝文さんが担当してくれます。
船で5分ほど沖に向かい、養殖の仕掛け(「養殖筏」と呼ぶ)に、船を寄せます。
今の時期(5?8月)は、ホタテとホヤの養殖の様子を見学します。養殖の行われている気仙沼湾の環境についての解説の後、ホタテの稚貝が養殖の仕掛けに付着して市場に出荷されるまでの生育工程について、実際の道具やその場で引き上げたホタテを使って解説してくれます。
興味深いのは、ホタテの稚貝が海流に乗って、自然に流れてくるというお話。
畠山勝文さんは、「お百姓さんは農作物を作るのに畑に種を蒔くけれど、私たちは種をまかなくても、海がホタテの稚貝を運んできてくれるんです」と誇らしげに解説してくれます。海の偉大さを感じますね。
解説を聞いた後は、ナイフを使ってホタテの貝を開き、一人ひとつずつ試食します。
とれたての新鮮なホタテは、醤油も付けずそのままパクッ! 海水の塩味がホタテの甘い味を引き立て、絶品です。
一方、「ホヤ」は三陸地方の初夏の代表的な味覚。その姿から「海のパイナップル」ともいわれます。
東北・北海道を除く地域ではほとんど食用として利用されていませんが、ここ三陸地方では珍味として好まれています。こちらもご試食いただけます。
せっかく船に乗ったのでということで、サービス精神旺盛な畠山さんは、必ず少し時間をとって、釣りとウミネコの餌付けを体験させてくれます。
船からの景色を楽しむクルージング気分も味わいながら、あっという間に予定の90分。
季節よっては、船上で牡蠣鍋や、ワカメ汁とメカブを試食していただくことになります。
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