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「フードバンクが“食”をつなぐ」バックナンバー

0062017.11.28UP持続可能な社会を築く-余剰で不足を補う-

 1972年、「成長の限界」という研究報告書が発表され大きな話題となりました。ローマ・クラブがまとめたこの研究では、当時の最新技術を駆使しシミュレーションを行なったところ、このままでは地球と人類は100年以内に成長の限界に達し、環境汚染や食料不足によって破滅するという結果が出ました。それから45年、世界はどのように変わったのでしょうか。

地球一個分の生活を目指して

限りある資源を大切に、次世代に残すために私たちがすべき事は。
限りある資源を大切に、次世代に残すために私たちがすべき事は。

 イギリスの古典派経済学者のマルサスも「人口論」において人口は急増するが、食糧生産は緩やかな成長しかできないことを1798年に説いています。その他にも多くの警鐘が鳴らされてきたにも関わらず、今も世界人口は毎年7,000万人程増えており、大量消費社会は成長を続けています。驚くべきことは、ただでさえ人口増加に追いついていない食糧生産のうち、3分の1は人の口に入ることなく廃棄されているということです。
 「限りある資源を大切にしよう」という言葉はよく聞きますが、私たちがそれを実践できないのにはどのような理由があるのでしょうか。一つは私たちの平均的な生活が異常であることの自覚がないことです。エコロジカルフットプリントという手法を活用して見えてくるのは、私たち人類は地球が生産できる資源の1.7個分を利用していることです。日本人に至っては、地球2.9個分の資源を利用して生活を送っていると言われています。それはつまり、貧しい国々が経済的に豊かになったときに今の日本のような暮らしをしようとすれば、地球の資源はあっという間に枯渇するということです。私たちは他の国の生活レベルを押し上げつつ、自分たちの生活も消費量と合わせて適正量まで落とすことを考えていかなくてはならないのです。

当たり前の行動を後押しする

余剰と不足をより効率的に繋ぐためシミュレーションを繰り返す。
余剰と不足をより効率的に繋ぐためシミュレーションを繰り返す。

 私たちセカンドハーベスト・ジャパンはフードバンク団体です。余剰食品を集めて生活困窮者や福祉団体に届けていて、たくさんの「ありがとう」という言葉をいただきます。しかし決して困っている人たちを助けたいというモチベーションが活動の中心にあるわけではありません。
 食料が不足している環境の中で、ご自身が2食分の食べ物を持っていて、目の前にお腹が空いて何日も食べていない人がいたら、ほとんどの人が無理して2食分食べたり、もしくは捨てたりせず、1食分は必要な方に分け与えるでしょう。
 広い視野から見れば、世界でも同じことが起きていますが、その1食分を分ける人はほとんどいません。その理由としては、(1)困っている人が目の前にはいないので問題が実感できない、(2)実感できたとしても分け方がわからない、という2つの壁があると思います。
 私たちは(1)の問題に対して活動の広報を通じてアプローチし、(2)の問題はフードバンクというシステムを提案することで、人として本来起こすであろう“余剰を活用して不足を補う”という行動を後押ししている団体です。

私たちが今すべきこと

2HJでは2020年までに10万人に食品を届ける事を目標にネットワーク構築を行なっている。
2HJでは2020年までに10万人に食品を届ける事を目標にネットワーク構築を行なっている。

 かけ算で増えていく人口に対し、たし算でしか増えていかない食料という根本的な課題の解決策は私たちももっていません。しかし今すぐ取り組めることとして、まずは今ある資源を大切にし、自らの消費について見直し、社会で資源を共有していくために投資をしていくことはできますし、必要なことだと思っています。
 先に論じたように課題は山積みですが、社会が「本当に必要だ」と感じることができれば決して難しいことではありません。社会は一人ひとりの行動の積み重ねで形成されます。このコラムを読んで、ひとりでも小さなアクションにつながる方がいればよいと願っています。


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