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「フードバンクが“食”をつなぐ」バックナンバー

0032017.01.31UPフードセーフティネットを築く-食べる事に困らない社会-

食べる事に困る人たち

 この記事を読まれている方の中で、経済的な理由で食べることに困ったことがある経験をお持ちの方はどのくらいおられるでしょうか?
 2HJでは毎週木曜日と土曜日、東京の浅草橋オフィスで食品の配布活動を行っています。多い日には1日50世帯以上の方々が食品を引き取りに来ます。また引き取りに来ることができない方にむけて、週200箱ほどの食料を郵送でお送りしています。

2HJでは、浅草橋オフィスで個別世帯への食料の配布に加えて、約260ヵ所の福祉施設や生活困窮者の支援活動を行う団体へ食品を届けている。
2HJでは、浅草橋オフィスで個別世帯への食料の配布に加えて、約260ヵ所の福祉施設や生活困窮者の支援活動を行う団体へ食品を届けている。

 近年、メディアなどを通じて、日本の子どもの貧困率が約16%となり、世界的にも高い水準であることが報道されていることをご存知でしょうか。厚生労働省がOECDという国際機関の相対的貧困率の算出方法を参考に出している数字です。ただ、この数字は所得をベースにした統計です。さまざまな事情により所得が少なくても豊かに暮らしている人もいれば、所得が多くても債務などによって苦しい生活を強いられている人たちもいるため、困窮度は所得だけでは計れない事もあります。
 今回は生活が苦しい人たちの実態と、なぜ食料支援が必要かという事に着目してお送りします。

生活が苦しいとき、食はまっさきに削られる

 経済的指標ではなく、日本では実際どれだけの人が「生活が苦しい」と声をあげているかご存知でしょうか。厚生労働省による平成27年の国民生活基礎調査では、児童のいる世帯で「生活が大変苦しい」と答えているのは30%、「やや苦しい」と答えているのは33.6%となっており、合計で60%以上の子どものいる世帯が「生活が苦しい」と答えているのが分かります。
 では、あなたなら生活が苦しい時にはまず何をしますか? 冒頭の質問に戻りますが、食べる事に困ったことはないけれど、食費を抑えて他の出費に備えた経験があるという方は多いと思います。食費は家賃や通信費などの支出に比べ調整しやすく、まっさきに節約の対象となります。
 平成26年度の全国消費実態調査(2016年3月25日公表)では、平均して収入の約15%が食費に回っている事が分かりますが、生活困窮者の場合、この15%の食費を最大限別の必要支出にまわせるように、「(十分に)食べない」という選択肢が取られてしまいます。

各国の食料支援事情

 食費を節約して別の支出に回すことが本人の選択であったとしても、健康な生活を維持するための最低限の食料へのアクセスは人間の権利として誰にでも開かれていなくてはいけないと私たちは考えています。特に大量の食料が余っているのであれば、なおの事です。
 こうした理由で、世界ではフードセーフティネットの充実が図られています。食べ物に困った際、緊急的に食料が受け取れる拠点数はニューヨークで1,100ヵ所、香港で520カ所あると以前ご紹介しましたが、それらは私たちの実施するパントリー活動や炊き出しのようなものだけではありません。例えば、アメリカの一部の大学には学生向けのフードバンクが学内にあり、学生証を見せれば誰でも健康に暮らすための食料と、トレットペーパーなどの衛生用品を受け取ることができるそうです。

交番や図書館が誰にでも開かれているように、健康を維持するための食へのアクセスも誰にでも開かれるべき権利であるべき
交番や図書館が誰にでも開かれているように、健康を維持するための食へのアクセスも誰にでも開かれるべき権利であるべき

 食料が無償で受け取れる拠点だけでなく、公的扶助として食料費を補助するためのフードスタンプや、国によっては生活困窮者のみが利用できて食品が市場価格より安いスーパーマーケット、賞味期限(消費期限ではなく)が切れた食べ物をメーカー等の了承のもと安価で販売する団体など、さまざまな手法で、誰もが食へアクセスできるよう、世界各地で新しい試みが実践されています。

活動が広がるために

国内でも、食料が受け取れる拠点のネットワーク化が少しづつ広がってきている。
国内でも、食料が受け取れる拠点のネットワーク化が少しづつ広がってきている。

 日本でこれだけ多くの人々が「生活が苦しい」と声をあげている中で、余剰食品が果たせる役割はとても大きく、またその活用方法も他国の例を見ても無限の可能性を秘めていると言えます。
 日本においてはフードレスキューもフードセーフティネットも新しいコンセプトです。農林水産省や企業、支援者の皆さまのご協力により、当団体が活動をはじめた2002年に比べ、食品を寄贈する行為も食料支援を受ける事もずいぶんと理解が進んできました。

 次回以降、ここからさらに活動を広げていくために乗り越えていかなくてはいけないハードルについて、紹介したいと思います。


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