第2回のエコレポで、沖縄でスーパーマーケットやホテルなどから食品廃棄物を回収し、飼料にリサイクルして豚を育てている話をしました。今回は農家との提携が本格的に始まって、堆肥にリサイクルして野菜を育てている話をしましょう。
回収してきた食品は飼料に使う「ごはん」「パン」「野菜くず」「魚のアラ」「お弁当」など種類ごとに分別されています。それを、豚の発育に合わせ栄養を考えたレシピに配合します。飼料に使わない残りのものは、豚舎に敷いてある豚の糞尿がしみこんだオガクズといっしょに発酵させて堆肥を作っています。
堆肥化とは人の手によって微生物が活動しやすい環境を整え、有機物を微生物に分解してもらい、その栄養を植物が吸収しやすい状態にすることです。堆肥は栄養をゆっくりと安定供給していくことができます。植物に栄養を与え続けることで、病気や虫に負けない強い畑になっていきます。これを「地力」をつけるというそうです。
山林では、土が1センチできるのに100年以上かかると言われています。自然界には枯葉や命を遂げた小動物などの有機物をエサにする色々な微生物がいて、彼らの営みによって有機物が分解され、季節がめぐり土になるということです。長い歳月がかかるのは、微生物の活動が環境の条件に左右されるからです。
そこで、人間が効率的に堆肥を作るには、微生物たちにあった環境条件を作ってあげることが必要です。堆肥を作るための堆肥貯蔵槽に糞尿のしみこんだオガクズと生ごみを約一ヶ月入れ、下から人工的に空気を送って発酵させていきます。パワーシャベルで何回かかき混ぜることもします。こうして空気を入れることで、微生物に酸素を補給するほか、分解のムラをなくしていきます。
微生物たちの力も借りて発酵させた堆肥は、ふるいにかけて異物を取り除き、粒子をそろえてから畑に運びます。畑に運んだら土と混ぜて約2ヶ月おいて熟成させてから、作物の苗を植え、種を蒔きます。畑の中では先ほどの「地力」が働いていきます。
いま、堆肥を入れた畑では、レタスとほうれん草を育てています。苗を植えたり、種を蒔いたりしてから50日から60日で収穫できます。堆肥を使っている農家さんは「販売されている牛糞の堆肥よりも、軽くて作業がしやすく使いやすい」と言って喜んで協力してくれています。循環型社会のための営みが、まだ小さくではありますが着々と進んでいます。
収穫量を増やすために農薬や化成肥料が大量に使われるような農業と比べると、自然の「地力」にゆだねた農業はおいしく安心、安全な作物をすくすくと育てます。
捨てられるはずだった食料を、回収して堆肥にリサイクルすることで、また新しい食べものの「生命」を育む底力になっているのです。
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