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「石巻カーシェア道中記」バックナンバー

0042014.06.10UP『関係』を作るタイアップ

カーシェアリングの車をタイヤ交換してくれている石巻専修大学の学生たち(理工学部機械工学科自動車工学コース)
カーシェアリングの車をタイヤ交換してくれている石巻専修大学の学生たち(理工学部機械工学科自動車工学コース)

 私たちがこの取り組みを今まで維持発展できたポイントを1つ述べるとすれば、それは様々な『タイアップ』を成功させてきたことです。今回は私たちが行ってきた『タイアップ』について今までご協力いただいた方々のお顔を思い浮かべながら、感謝の気持ちと共にご紹介します。
 
 2014年4月11日、私たちの車、約40台は、石巻専修大学で自動車工学を専攻する学生たちの手により、タイヤ交換をはじめとした各種メンテナンスが施されました。タイヤやオイルをはじめとする交換部品は全てメーカーが協賛してくださいました。

貢献したい企業の熱い気持ちを形にする

協賛品として届いたタイヤ(日本ミシュランタイヤ)
協賛品として届いたタイヤ(日本ミシュランタイヤ)

管理しやすいようにデータを整理してれている社員ボランティアさん(NTTデータ)
管理しやすいようにデータを整理してれている社員ボランティアさん(NTTデータ)

 東北の冬、車にはスタッドレスタイヤが必需品です。全国から集まる車にはスタッドレスタイヤは当然ついておらず、数十台分が必要になりました。タイヤメーカーへ直接協力を相談させていただいたところ、なんと数日後には新品のスタッドレスタイヤを揃えてくださったのです。その手際の良さは圧巻でした(日本ミシュランタイヤ、東洋ゴム工業、住友ゴム工業、横浜ゴム)。また、私が打診した翌日、社長自ら電話をいただき逆にお礼のご連絡をいただいたオイルメーカーなどもありました(ルート産業)。
 震災後、被災地へ貢献したい気持ちが企業活動に従事する方々の心の中にあり、どういう形で貢献できるか模索している状態がありました。誤解を恐れずに言うと、私たちが現場で協力を必要としているという情報をきちんと伝えることは、貢献したい企業にとっても必要としていたと思っていたので、臆することなく協力を相談させていただきました。結果、「待ってました!」と言わんばかりにこの学生整備プロジェクトのような様々な協力をいただいたのでした。
 例えばカーシェアリングの利用状況を整理するシステムを作ってくださったり(NTTデータ)、車に搭載するための防災グッズを提供してくださったり(大自工業、大橋産業)、さらには車両を提供してくださったり(ガリバーインターナショナル、三菱自動車工業)など様々な企業が私たちの相談に応えてくださいました。
 企業へ協力の相談をするとき、相手方へのメリットを示さなければと考える人もいますが、私はそういうことを言ったことはほとんどありません。私はただその協力がどれだけの貢献になるのかをきちんと伝え、協賛いただいた暁にはそれらを最大限に活用し、より大きな貢献を作ることに全力を注ぎました。私たちが背伸びをして経済的なメリットを作ろうとするよりも、必要な人が得る喜びと、提供する人の役立つことへの喜び、その2つの喜びをきちんと作ることこそが私たちの役割だと思っています。さらに、そうした喜びがきちんと生まれれば、最終的に経済的な効果(協力企業へのご恩返し)も生まれてくるものだと私は思っています。

全国からの支援を地域の助け合いへ

バスで姫路から整備に来てくれた学生たち(日本工科専門学校)
バスで姫路から整備に来てくれた学生たち(日本工科専門学校)

 この学生整備プロジェクトは、最初は私の故郷でもある姫路の自動車整備専門学校「日本工科専門学校」の協力から始まりました。2011年の秋、2012年の春の2回、それぞれ約20名ものメンバーが、石巻までバスで駆けつけ、タイヤ交換をはじめとする車の整備を行ってくださいました。2012年の秋にはこの取り組みを継続させるため宮城県内の専門学校「赤門自動車大学校」に打診し、実施しました。そして2013年の秋から石巻専修大学理工学部機械工学科自動車工学コース(山本憲一教授)に最終的には実施していただけることになりました。
 私が意識したのは、『全国からの支援』を『地域の助け合い』に少しずつ変えていき『継続性』を作っていくということでした。全国から駆け付けて支援活動に取り組む方々の姿に感動し、被災地の多くの方々の心の中に「私もなにかできることをやりたい」という気持ちが芽生えました。
 「今回の震災でたくさんの支援をいただきましたが、これからは支援をする側になって恩返しをしていきます」
 と私たちの車の整備に協力してくださった地元の整備工場の社長がNHKのインタビューで語ってくれたこともありました。
 今、被災地は地域の助け合いが生まれやすい素晴らしい土壌が全国からの支援者の方々のおかげで生まれているのです。

若い人たちの『経験』を作る

送迎希望者の方々に説明を行う石巻専修大学の学生たち(山崎ゼミ)
送迎希望者の方々に説明を行う石巻専修大学の学生たち(山崎ゼミ)

住民の方々に自分たちの考案したキャラクターを説明する東京学芸大学の学生たち(正木賢一研究室)
住民の方々に自分たちの考案したキャラクターを説明する東京学芸大学の学生たち(正木賢一研究室)

 学生整備プロジェクトを行う中で、先生や学生たちから「よい経験だった」と喜びの声をたくさんいただきました。『経験』こそが人を成長させるものであると私は思っています。私たちの活動に必要なことが地元の学生や若い人たちにとって成長するための一つの人生経験になるなら、そんなにいいことはない。私はそのマッチングを探していき、この取り組み以外にもいろんな機会を作っていきました。

  • 協会の会計業務自体を実践授業として取り組む石巻専修大学経営学部の竹中徹ゼミ。
  • カーシェアリングの車を活用した送迎事業を立ち上げ推進した石巻専修大学経営学部の山崎泰央ゼミ。
  • 私たちのトータルデザイン(ロゴ、ホームページデザイン、そしてキャラクター『Su:ton(スートン)』と『Ro:ly(ローリー)』※)に取り組んでくださった東京学芸大学の正木賢一研究室。※『石』と『巻』で合わせて『石巻』

 学生たちとのタイアップを行うとき、私たちが心がけているのは、学生たちの機会を最優先する事です。
 私たちが受ける恩恵の優先順位は一番最後に位置させています。
 私たちが恩恵を受けることよりも、地元の若い人たちの成長する機会を作るという 役割をその地域コミュニティで果たすことの方が、私たちにとってはるかに大切なことなのです。
 もちろん学校側も学生たちも私たちの活動へ貢献しようという気持ちで臨んでいた だいております。
 そして、先生方や学生たちが熱心に取り組んでいただいた結果、私たちは当初抱い ていた期待を大きく超えた恩恵を受けることができております。
 お互いがお互いへ貢献しようという気持ちが重なることが、タイアップを行う上 で重要なのだと思います。

中心にあるのは『関係』

毎週事務所に通い会計業務を行ってくれる石巻専修大学の学生たち(竹中ゼミ)
毎週事務所に通い会計業務を行ってくれる石巻専修大学の学生たち(竹中ゼミ)

 私たちが活動を行う中で意識しているのは『関わりを作る』ということです。どんな小さなことでも協力していただき、この取り組みに参画いただくようにしています。例えば、廃油で走る車も一台所有していますが、その燃料のためのてんぷら油を仮設住宅に住むおばあさんに分けていただく、そこから関わりが生まれていくのです。
 言うなれば私たちの取り組みは、活動を手伝ってくださるボランティア、車を提供してくださる方、協賛企業に従事される方お一人お一人とのタイアップ事業であり、関わりを生み出すことで事業を前進させているのです。
 たくさんの方々に支えられ、そして私たちの車も必要とする人たちを支えるために活用され、こうした支えあいの連鎖の中で維持されていく。『関係』を取り組みの中心に据えたカーシェアリング、それが私たちのコミュニティ・カーシェアリングなのです。

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