ここ数年、食をテーマにした映画の公開が続いています。
狂牛病にはじまり食品偽装、食品への農薬混入事件などなど、相次ぐ事件によって、安全で安心な食への関心が一気に高まったからでしょう。一方で、服部幸應さんなど著名な料理評論家や食のプロによる「食育」【1】の試みも目立ってきているので、「事件」だけがきっかけでもないようです。
イタリアから世界へ広がったスローフード運動【2】やアメリカのローカルフード運動【3】も、食に関係する映画の登場と遠からず結びついているように思います。
今年4月に公開された『キング・コーン(2007)』の主役はトウモロコシ。大学で仲が良かったイアンとカートの二人組が、アイオワ州の田舎町に移り住んで1エーカーの土地を借り、地元の人たちにノウハウを学びながら、いわゆる“一般的な”やり方でのトウモロコシ栽培を経験する1年間を追ったドキュメンタリーです。
アメリカで生産されるトウモロコシのうち、人間が直接食べているのはほんの1割程度で、残りは家畜のえさやコーンシロップ、バイオ燃料、土に還る生分解性プラスチックなどの加工原料になっているということ。そのトウモロコシは品種改良され、でんぷん質ばかりの“工業用”トウモロコシになっていること。それが牛肉やソフトドリンクの原料などさまざまに形を変えて私たちの胃袋に入っていること…などなど、トウモロコシを取り巻くさまざまな“環境”を映し出しています。
夏のバーベキューの定番のトウモロコシがこんなことになっていたなんて! と驚くような事実が、仲良し二人組のナゼナニ目線で語られます。さすがエンターテインメントの国、アメリカで作られたドキュメンタリーだなと思わせる、飽きさせない展開になっていますので、ドキュメンタリーは苦手という人でも大丈夫かも。
『未来の食卓(2008)』は、「小学校の給食をすべてオーガニックにする!」という前例のない試みに挑戦し、今ではフランスでのオーガニック給食導入の先駆的存在となった、南部の小さな村での日々を綴っています。ゴッホの絵にも描かれているような美しいフランスの田園風景と、(畑にズームしたときに)一面に霧がかかったように農薬がまかれている光景の対比が印象的。大事な人を病気で亡くす、癌の発症率が高い・・・身近な健康という切実な話題から、食の見直しに話がつながります。自分たちで野菜を育ててみたり、嫌いなニンジンをよけて注意されたり…子ども達の素直な反応がかわいらしい反面、データを駆使して観る人を説得していく展開は、フランス版『食の不都合な真実』のようです。
ご紹介した2つの作品はそれぞれ、アメリカ/フランス発でしたが、日本発の“人と食を巡る旅”をテーマにした映画『eatrip』も、6月6日から全国公開中なのでチェックしてみてください。
また、すでに一般公開が終了したものの中にもおすすめはたくさんあります。
ドキュメンタリー映画なのにまるでフィクションのようなタイトル、ドラマチックで衝撃的な内容で話題を呼んだ『ダーウィンの悪夢(2004)』。『いのちの食べ方(2005)』は、セリフ・ナレーションなしで淡々と私たちが日々口にしているものが「生産」される様子を映し出しています。
「食べる」ではなく「飲む」のほうですが、ワイン好きには、世界のワイン生産現場を描いたドキュメンタリー『モンドヴィーノ(2004)』を。コーヒー好きの人は、次の豆を買う前に『おいしいコーヒーの真実(2006)』がヒントになるかも。
メジャーな映画ではありませんが、レンタルビデオ屋さんでも貸し出しているところがありますよ。
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